製品や生産設備などから生み出される大規模データ(ビッグデータ)を活用する動きが、あらゆる業界で進んでいる1)。そうしたビッグデータ活用の取り組みを加速させている企業の1つがリコーだ。従来、同社は客先で稼働している複合機のデータを主に顧客の利便性向上や自社の保守業務の効率化に役立ててきた。最近では製品の企画や設計、部品の在庫管理などにもビッグデータを活用し始めている。

原稿の傾向から消費量を予測

 リコーは、複合機事業において稼働データを活用したサービス「@Remote」を100以上の国・地域で展開している。同サービスの内容は、故障の自動通知や原因分析、ファームウエアの更新、トナーの自動配送、レポートの作成など多岐にわたる。前身のサービスも含めると、同社は約20年も前から稼働データを活用したサービスを顧客に提供してきた。現在、全世界で稼働している同社製複合機の6割近くが同サービスの適用対象だ。

 当初は電話線を用いて必要最小限のデータを集めていたが、近年はインターネット経由で複合機の稼働状況をリアルタイムで把握することが可能になった。取得しているデータの種類は、多い機種で2000~2500に達する。このようにデータの種類や量が増加するのに伴い、リコーは@Remoteを通じて取得したデータの活用先を拡大しつつある。具体的には、[1]製品仕様の決定、[2]部品設計の最適化、[3]消耗品在庫の管理、などだ(図1)

 [1]の例としては、トナーの自動配送のタイミングを個体単位で設定できる仕様にしたことが挙げられる。@Remoteではトナー残量が少なくなると、顧客から特に依頼されなくてもトナーを配送するサービスを提供している。従来、そのしきい値となるトナー残量は機種ごとに一律で設定していたが、顧客側の稼働条件によってトナーを消費する速さに差があるので、実際は新しいトナーを配送する前に現行のトナーがなくなり、文書のコピーやプリントができなくなることがあった。これでは、せっかくトナーを自動配送する機能があっても顧客がその価値を十分に享受しているとはいえない。

 
〔以下、日経ものづくり2013年8月号に掲載〕

図1●ビッグデータの活用先
顧客向けサービス「@Remote」を通じて取得した稼働データ(ビッグデータ)の活用先が拡大している。
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* この他、顧客への営業や改善提案にも活用している。具体的には、顧客による複合機の利用状況を基に適切な機種への買い換え/交換を勧めたり、最適なコピーやプリントの仕方を提案したりする。