カルソニックカンセイは、電気自動車(EV)に搭載するLiイオン2次電池の充電率(SOC:State Of Charge)を2~3%の精度で推定する技術を開発した。EVの実質的な航続距離を延ばすことに加えて、安全性の向上につながる。(本誌)

 カルソニックカンセイは、複数の技術を組み合わせることで従来と比べて高い精度で電池のSOCを推定する手法を開発した(図1)。電池はLiイオン2次電池やNi-MH(ニッケル-水素)2次電池など各種に対応する。

 SOCを推定する精度が高まると、EVの弱点である航続距離を実質的に延ばせる。EVの航続距離を計算するときは推定誤差を踏まえた余裕分を見込む。例えば実際の航続距離が200kmのとき、電池のSOCを推定する精度が10%であれば、残りの航続距離は20km短めに見積もって計算しなければならない。仮に精度が3%になると、20kmではなく6kmと短く見積もれるので航続距離を実質的に14km延ばせる。この差は大きい。実際にこれだけ延ばそうとすると、高価な電池の容量を1kWh近く増やしたり車体を大幅に軽くしたりする必要がある。コストは大きく増えるだろう。

 開発した手法を使えばコストはほとんど増えない。基本的にハードウエアの構成はこれまでとほぼ同じで、電池を制御するシステムのソフトウエアを変えるだけで実現するからだ。

 さらに、開発した手法を応用することで電池の劣化率(SOH:State of Health)についてもSOCと同様に2~3%の高い精度で推定できることが分かっている。

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
図1 新しく開発したSOCの推定手法を適用する電池制御回路
図1 新しく開発したSOCの推定手法を適用する電池制御回路
既存の量産品。これに適用できることが特徴の一つ。