浅沼技研は、Al(アルミニウム合金)を半溶融で鋳造する技術「チクソキャスティング」を開発した。ダイカストよりゆっくりと金型に押し込むため、頑丈で高価な金型が要らない。場合によっては一部を砂型で済ませることもできる。このためにビレットを量産する装置、それを加熱して半溶融状態にする装置を試作した。

 「チクソキャスティング」はAlの半溶融・半凝固成形技術の一種である。Alで複雑な形の部品を造る方法は、ダイカストから鍛造に至るまで数多くある(図1)。半溶融成形法は今のところ鍛造の一歩手前という位置づけである。成形品の品質は高いが、価格も高い。

 開発したチクソキャスティング法を使うと、半溶融成形を中小企業でも手軽に使えるようになる。ダイカストで造っているような部品から置き換えたり、スクイズキャスティングなど、ほかの方法から置き換えることもできる。半溶融成形法並みの製品がダイカスト並みのコストでできるようになる。

 半溶融というのは、溶けたAlの“海”(共晶Si)の中に固まったAlの“島”(初晶α-Al相)が浮かんでいる“海島構造”の状態だ。顕微鏡写真で“海”は黒く、“島”は白く見える(図2)。Alの中のSi(ケイ素)の比率が高い黒く見える部分は溶ける温度が低く、白い部分はAlの比率が高く、溶ける温度が高い。そのために、ある温度のときに、黒い部分だけが溶けた状態となる。“島”は球形になり、“海”の中で流動する。

 このため、全体が液体のように自由に変形し、低速、低圧でも抵抗なく狭いところに入っていく。

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
図1 Al製部品の製造法と品質、コストの関係
半溶融成形法は品質では鍛造に次ぎ、コストではダイカストに近い位置になる。
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図2 チクソキャスティングの組織
図2 チクソキャスティングの組織
白い部分(溶ける温度が高い)が球形になっている。