多様化と変化の激しい市場に競争力のあるクルマをスピーディーに投入するため、自動車メーカーが取り組み始めた「企業内標準」を活用したモジュラーアーキテクチャ。今回は、それをいかに自社の仕組みに落とし込み、実効性を高めていくかを考える。

 ドイツVolkswagen社や日産自動車などが志向するモジュラーアーキテクチャは、単に製品設計の改革にとどまらない。製品のモジュラー設計技術をクルマに統合することが中核となることは間違いないが、それを着実に実行する仕組みとして、「戦略と目標」「実際の運用」「企業文化」「強力な推進力」といった要素が非常に重要になる。

 Volkswagen社が目指すモジュラーアーキテクチャの場合、そのコンセプトが10年間にわたって競争力を持ち続けることを目標としている。一方、モジュラーアーキテクチャを適用した最初の数年間は、コンセプトを開発するために多大のリソースを使うため、どうしてもコスト高になる。

 従って、今後どのような市場にどのような製品を投入していくかという長期的な“戦略”を決めた上で、いつどのようにモジュラーアーキテクチャの恩恵を享受するかという“目標”を明確にする必要がある。この「戦略と目標」によって、モジュールを構成する範囲と対応モジュールの特性が決まってくる(図1)。

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
図1 モジュラーアーキテクチャを実現する五つのポイント
図1 モジュラーアーキテクチャを実現する五つのポイント
製品のモジュラー構造を中核として、長期的な戦略と目標、実際の運用、企業文化、推進力をそろえる必要がある。(出典:A.T. カーニー)