国内で車両の走行履歴を使った自動車保険サービスが始まった。損保ジャパンは2013年7月、車載通信機で収集した走行距離の情報を基に保険料を決める自動車保険「ドラログ」を発売した。まずは日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」のユーザーを対象にする。

 車両の走行情報といった利用履歴を用いた保険サービスは「UBI(UsageBased Insurance)」と呼ばれ、最近、世界で注目を集めている。海外では既にサービスが始まっており、多くの加入者を集める企業が出始めている。代表例が米Progressive社で、2011年から「Snapshot」と呼ぶ保険サービスを提供している。車両の故障診断機能「OBDII」のコネクタに通信機を取り付けて、車速やブレーキペダルの操作情報などを収集する。この情報を基に運転パターンを解析し、安全な運転を心掛けるユーザーと判断すると保険料を最大で30%割り引く。通信機は無料で提供し、90万人以上の加入者を集めたとされる。

 保険会社はこれまで、事故のリスクを計算するのに年齢や運転歴、車種などの静的な情報に頼っていた。走行距離を保険料に反映する場合も自己申告の情報に基づく。情報の精度が低いのでリスクを大きめに取らざるを得ず、その分保険料が高くなる。車載通信機で個人の運転履歴の詳細を収集し、その情報を基に計算すれば事故のリスクを正しく見積もりやすい。例えば保険料が高くなりがちな若い人でも、走行距離が短く、急に加減速する頻度が少ない人は事故リスクが低いといえそうだ。

 走行履歴を用いた保険サービスが広がることは、自動車メーカーに好影響をもたらす。走行履歴の収集には通信機がいる。車両の保有コストに大きく関係する保険料が変わるとなれば、ユーザーが通信機を搭載した車両を選ぶ可能性が高くなる。自動車向け通信サービス「テレマティクス」の普及を後押しするだろう。

 損保ジャパンが発売したドラログは、世界で注目を集め始めた走行履歴に基づく保険サービスを国内でいち早く実用化したもの(図1)。現在はリーフのユーザーのみが対象で、保険料の算出に用いる情報は走行距離だけ。Progressive社のように、ブレーキの情報などは使わない。

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
図1 ドラログの仕組み
車載通信機で収集した車両の走行距離を基に保険料の割増引率を決める。
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