2013年6月、日産自動車は軽自動車「DAYZ(デイズ)」を発売、三菱自動車は軽自動車「eKワゴン/eKカスタム」を全面改良した(図1)。両社が共同出資したNMKV(NissanMitsubishi Kei Vehicle)が開発した姉妹車だ。日産は自分が持っていない「軽を開発した経験」を求め、三菱は日産と組むことによる「規模の経済」が欲しかったという。

 両車種の全高は1620mm(2輪駆動車)で、ダイハツ工業の「ムーヴ」と同じ。先代のeKワゴンは1550mmだったから、三菱は商品の立ち位置を軽のボリュームゾーンへと変えたことになる(図2)。日産にとっては三菱からeKワゴンのOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けていた「オッティ」に代わる車種になる(図3)。

 自然吸気、前輪駆動、アイドリングストップ車のJC08モード燃費は29.2km/L。これは、6月6日の発売当時、全高1550mm以上の軽ハイトワゴン中最高だったが、それも長くは続かなかった。

 開発に着手したとき、燃費の目標は28.2km/Lだった。スズキが「ワゴンR」を28.8km/Lにして出してくることが判明したため、2012年の冬に急遽目標を29.0km/Lに上げた。

 急遽増やした0.8km/Lの内訳は、車体、エンジンがそれぞれ0.3km/L、空力が0.2km/L。車体ではブレーキの引きずり抵抗、ハブキャリアの摩擦損失、タイヤの転がり抵抗を減らした。エンジンでは制御を改良し、電気負荷を低減、タイミングチェーンを摩擦抵抗の少ないものにし、さらにエンジン全体の摩擦抵抗を減らした。空力では、Aピラーの曲率を改良し、バンパの角、前バンパの下端、ルーフの後端、側面を微調整して抗力係数を合計で0.06下げた。

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
図1 発売に先立つ5月20日、三菱自動車水島工場でのラインオフ式
図1 発売に先立つ5月20日、三菱自動車水島工場でのラインオフ式
左が日産自動車の志賀俊之COO、右が三菱自動車の益子修社長。
図2 三菱自動車の「eKカスタム」
図2 三菱自動車の「eKカスタム」
先代より全高を70mm上げ、軽のボリュームゾーンに挑む。
図3 日産自動車の「DAYZ」
図3 日産自動車の「DAYZ」
アラウンドビューモニターがつくのが日産らしいところ。