ドイツAudi社は報道関係者向けに同社の環境技術を紹介するイベント「tronexperience」を5月末に開催した。電気自動車(EV)スポーツカー、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)、天然ガス車(NGV)など多彩な車両に試乗することができた。

 今回のイベントで同社は、EVの「A1e-tron」、PHEVの「A3 e-tron」、EVスポーツカーの「R8 e-tron」、ル・マン24時間耐久レースで走ったハイブリッド車「R18 e-tron quattro」といった従来の電動車両に加え、新たに天然ガス車にも「A3 g-tron」という名称を付けて展示した。従来はEVとPHEVを含む電動車両を「e-tron」と総称していたが、今回から「tron」とシリーズ名を改め、天然ガス車まで含めた環境車両全体の総称という位置づけにした。

 R8 e-tron(図1、2)は当初の予定だった2012年中の市販を断念したが、開発したエンジニアたっての希望で、今回のイベントで試乗を実施したという。実際にステアリングを握ってみると、確かに車両としての完成度は高い。

 駆動方式は、左右それぞれのリアアクスルに組み込んだ2基のモータで、左右輪を独立に駆動するというもの。モータは英Zytek Automotive社製で、左右合計で最大280kW/410N・mの出力を発生する。コーナリング時には外輪に、より大きなトルクを伝え、積極的に内側に曲げる。

 直進する時には左右輪に同等のトルクを配分し、同期させる。これは、ホンダの次期「NSX」に採用される予定の前輪の駆動方式と似た仕組みだ。左右の回転数の差が規定値を越えると、フェールセーフが働いてトルクを発生しなくなる。エネルギ回生も、この駆動モータが担当し、最大1.3Gの制動力を発生する。

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
図1 電気自動車(EV)スポーツカーの「R8 e-tron」
図1 電気自動車(EV)スポーツカーの「R8 e-tron」
530個のパナソニック(旧三洋電機)製セルを使って、最高速を200km/hに制限することで、215kmの巡行距離を確保する。230V家庭用電源では12時間でフル充電が可能。
図2 R8 e-tronの熱交換器
図2 R8 e-tronの熱交換器
室内用、電池用、パワーエレクトロニクス用、モータ用と4種の冷却系と熱交換器を備える。