ドイツZF社は6月、新技術を搭載した試作車、量産車の試乗会をドイツで実施した。9速自動変速機(9AT)、プロペラシャフトを無駄に回さない4輪駆動(4WD)機構、電気自動車(EV)用駆動装置など、駆動系の新技術を数多く披露した。

9ATのドグは長くて細い

 まず、9AT「9HP」を搭載した英LandRover社「Range Rover Evoque」の試作車を公開した(図1)。9HPはZF社が開発中で、2013年中に同車に採用することが決まっている。「9速でレンジが広いことを生かして燃費を向上」という触れ込みなので、どんどんシフトアップしてエンジン回転数を抑えるだろうと予測していたが、走ってみると街中の速度では直結段の5速のまま。通常は2速発進であることも手伝って、段数が多い割に頻繁に変速するという印象はない。

 併せて、9ATの新しいカットモデルを公開した。以前に発表したカットモデルではドグクラッチは見えなかったが、今回は軸だけのモデルを用意し、ドグクラッチを初めて見せた。

 9HPでは、自動変速機として初めてドグクラッチを採用することが注目されている。油圧多板クラッチより小さいため、6速とほぼ同じ寸法で9速を成立させるカギになる(本誌2011年11月号pp.18-19参照)。ただし、ドグクラッチは油圧多板クラッチと違ってオンとオフの中間がないため、シフトショックが気になるところだ。

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
図1 試乗した英Land Rover社の「Range Rover Evoque」
図1 試乗した英Land Rover社の「Range Rover Evoque」
ドイツの田舎道を走る限り、「9速」から想像するほど頻繁に変速する印象はない。