サンワ ハイテック「STAVi(スタビィ)」、ナノオプトニクス・エナジーの「UNIMO(ユニモ)」、KANZACCの「B.PHOENIX(ビー・フェニックス)」、テムザックの「RODEM(ロデム)」…。超小型モビリティよりもさらに小さな、1人乗りの電動車両が続々と現れた。どれも自動車以外の業種からの新規参入。新しい需要がそこにあると読んだ元気な企業が、それぞれ独自の製品を送り出す。

 高齢化が世界中で着々と進んでいる。高齢者に幸せな老後を送ってもらうためには、衰えた歩行能力を補う道具が必要だ。今の電動車いすやシニアカーでは性能もデザインも飽き足りない。だから量産規模が小さく、価格も下がらない。また、車椅子っぽいデザインで同情を引いてしまうことは避けたい。一方、“ちょっとそこまで”行くには、軽自動車未満の“超小型モビリティ”でもまだ大げさだ。新しい市場があると見た元気なメーカーが、1人乗りの電動車両に参入してきた。

 寸法は全幅にして700mm未満、出力はkWでなくW単位、最高速度は道路交通法では「歩行者」に分類される6km/h未満(表)。超小型モビリティよりも小さくて遅い。

 どれも自動車メーカーではなく、他業種からの参入だ。サンワ ハイテックは半導体製造機器メーカー、ナノオプトニクス・エナジーは超高精度高速研削・高温超電導送電などを手がける大学ベンチャー、KANZACCは電線メーカー、テムザックはロボットメーカー。どこも技術力はあるが、自動車を造るほどの規模はない。

 想定する使い方は文化施設、商業施設、娯楽施設、介護施設、リハビリテーションセンターの中を走ること。あれもこれもと幅広いことが“手探り”であることを感じさせる。ただし、こうした新ジャンルの乗り物の用途を読みにくいことは確かだ。先行した米Segway社の搭乗型ロボット「セグウェイ」は当初の想定とは違う分野で成功した(p.64の別掲記事参照)。幅広くしておくのは間違った戦略ではない。

後ろから、またがって乗り込む

 サンワ ハイテックは1人乗りの乗り物「STAVi」を開発し、営業活動に着手した。売り込む相手は美術館、博物館、図書館などの文化施設、展示会場、郊外型ショッピングモール、空港などの商業施設、テーマパーク、動物園などの娯楽施設だ。歩くのに不自由はないが、これらの施設で「普段の生活よりも長い距離を歩くのがつらい」というお年寄りに乗ってもらう。

 ユーザーに直接売るのでなく、これらの施設に売り、そこから最終ユーザーに貸し出すというビジネスの形を考えている。施設は来場者に貸し出すことにより、利便性の高さをアピールして来場者数やリピーター数を増やす。無料で貸し出しても引き合うビジネスモデルだが、レンタル収入を見込んで有料で貸し出そうという顧客もいる。

 カウルはFRP(繊維強化樹脂)製。発注者のデザインに合わせて塗装することもできる。木型で造り、カウルそのものを特注することもできるので、広告モデルも考えられる。既にカウルの形状を2種類用意した(図1)

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
表 主な1人乗り電動車
テムザックは2009年に発表したコンセプトモデルの数字で、この後進歩しているという。
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図1 サンワ ハイテックの「STAVi」
図1 サンワ ハイテックの「STAVi」
「Basic」(左)、「Active」(右)の2種類がある。