2013年3月に開かれた「ソウルモーターショー」。地元韓国でひときわ巨大なブースを構えていたのが、現代自動車(Hyundai Motor社)。米国、中国、インドなどで急成長した同社は、量的な成長から、ブランド力を高める方向へ方針を転換すると表明した。高付加価値路線でも同社の強さは続くのか。Hyundai Kiaグループの将来を占う。(林達彦)

Part1:躍進の踊り場迎える

2013年は741万台の生産目指す
上級移行で技術競争は激化

世界販売で第5位になったHyundai Kiaグループ。デザインの良さと価格の安さ、新興国での多様な車種展開でシェアを伸ばしてきた。今後、同グループはより品質に力を入れ、ブランド力を高めていく方針だ。北米で起きた燃費の水増し問題や大量リコールを乗り越え、高付加価値戦略へと舵を切る。果たして同グループの成長はこれからも続くのか、強さと課題を追った。

 Hyundai Kiaグループの韓国HyundaiMotor社とKia Motors社は、デザインの良さと価格の安さ、そして新興国における多様な車種展開が消費者に受け入れられ、近年の自動車産業で前例のない発展を遂げた。2012年のグループ販売台数は合計712万台と第5位の規模に成長、2013年も741万台に生産を伸ばす目標を公表している。

 これは取りもなおさず、経営陣がスピード感をもって、事業を推進しているからにほかならない。1998年に経営権を握った現会長の鄭夢九(チョン・モング)氏は、品質の向上を強力なリーダーシップで推進した。また、2006年にKia Motors社にドイツAudi社から著名デザイナーのPeter Schreyer氏を招くなど、デザイン改革を推進した(p.5に関連記事)。

 特にデザインについては、評価が高い。日産自動車常務でCCO(チーフクリエイティブオフィサー)の中村史郎氏は「Hyundaiのデザインは非常によい」と述べる。ドイツBMW社でエクステリア・クリエイティブ・ディレクターを務める永島譲二氏も、「Hyundai Kiaグループのデザインは素晴らしい。HyundaiとKiaで違うデザイナーを配置し、両ブランドの見分けがきちんと付くようにデザインしている。また、3次元的な立体形状の理解ができている」と評価する。

2020年に815万台生産へ

 デザインや品質の向上によって、米国、中国、インドなどで同グループの存在感は大幅に高まっている。2012年には中国において同グループの地域別で最も多い約134万台を販売。10.5 %のシェアを獲得した。

 米国でも好調を維持し、両ブランドの合計販売台数は126万台と8.7%のシェアを握る。進出が1996年と遅かったのにもかかわらず、急激に成長したのがインド市場だ。Hyundai社は39万台を販売し、Maruti Suzuki社に次ぐ14.1%で2位のシェアを得ている。

 インド市場で「スイフト」の好敵手となる小型車「i20」(図1)に対して、スズキのデザイナーも以下のようにコメントする。「Hyundai社は消費者の欲しがる要求をうまく表現している。スズキがドイツVolkswagen社と同様にボリューム感を重視したデザインを志向しているのに対し、Hyundai社はシャープさを強調している。こうしたキャラクターラインが強いデザインもインドでは人気がある」

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
図1 Hyundai社「i20」
図1 Hyundai社「i20」
全長3995mmと「スイフト」より100mmほど長い。