問題の根本原因はこう探す
前回は、TRIZの全体構成と具体的な内容について説明した。今回は、そのTRIZの効果を最大限に享受するために日本で培われた「日本式活用法」の内容を具体的な事例と共に見ていく。
最初に、日本式活用法の全体プロセスをおさらいしておこう(図1、2013年6月号p.120を参照)。
日本式活用法では、TRIZの手順に入る「前」と「後」に独自の工程を追加する。前工程では、自身が抱える開発課題の本質的な原因(根本原因)を探る。具体的な手法としては、機能面から原因を探る「機能―属性分析」と、問題の結果から順に原因をたぐり寄せる「原因―結果分析」の2つを実施する。これらを適切に実施して問題の根本原因を明確にしておかないと、あやふやな問題意識のままTRIZの手順に入ることになり、その結果、得られる解決策があいまいなものになってしまう。この点で前工程は、TRIZ活用を成功に導く上で重要なカギを握る。
前工程で根本原因を明確にしたら、TRIZの3つの手法を使って問題解決に向けたアイデアをチーム全員で出していく。あらゆる角度から問題を観察し、さらに過去の特許事例と対比することで思考を広げるのだ。これにより、大抵の場合、500件以上のアイデアを得られる。
後工程では、TRIZで導き出した大量のアイデアを整理/分類し、取捨選択したり複数のアイデアを組み合わせたりして最終的に1つの問題解決策に収束させていく。具体的には、米Massachusetts Institute ofTechnology(MIT)教授のStuartPugh氏が提唱した「Pughのコンセプト選択法」をアレンジした方法を活用する。
今回から次回にかけて、この一連の手順を1つの事例を基に解説していく。そのうち今回は、前工程からTRIZ手法の1つである「矛盾の克服(発明原理)」を用いたアイデア出しまでを取り上げる。
〔以下、日経ものづくり2013年7月号に掲載〕
アイデア 代表取締役社長
アイデア TRIZプログラム担当ディレクター