分析技術編: 日立パワーソリューションズ/NEC/
日本マイクロソフト/General Electric社

日立パワーソリューションズ
データマイニングで予兆診断を自動化

 「エネルギ、産業機器、情報・制御などの分野において、今後、高度な保守サービス事業を強化していきたい。そのためにこの予兆診断システムを積極的に拡販する」(日立パワーソリューションズ取締役社長の小田篤氏)。日立パワーソリューションズは、産業用設備の微小な変化でも故障かどうかをいち早く自動的に判定し、想定外停止を回避する予兆診断システム「HiPAMPS(HitachiPower Anomaly Measure Pickup System)」の販売を2013年6月に開始した(図1)。

 同社が培ってきたさまざまな産業用設備における保守サービスのノウハウと、IT分野で蓄積してきたデータマイニング技術を組み合わせ、産業用設備の予兆診断システムとして開発した。ガスエンジン発電装置を利用した実証実験に着手したのが2008年(図2)。具体的には、30秒周期で計測した約30種類のセンサデータを解析し、保守サービスの対応実績から蓄積した障害対応データベースと照らし合わせて、従来の方法では見逃しがちだった設備の微小な変化をとらえることを可能にした。

〔以下、日経ものづくり2013年7月号に掲載〕

図1●予兆診断システム「HiPAMPS」の画面表示例
設備から取得したデータをデータマイニング技術によって有効活用し、設備の状態変化をいち早くユーザーに知らせる。日立パワーソリューションズが提供。
[画像のクリックで拡大表示]
図2●ガスエンジン発電設備で実証実験
図2●ガスエンジン発電設備で実証実験
写真は日立パワーソリューションズの大沼工場内のガスエンジン発電設備。

NEC
「不変関係」に着目してプラントを監視

 ここ数年、プラントの事故が相次いでいる。そうしたプラントの事故を未然に防ぐべく、NECは「大規模プラント故障予兆監視システム」の開発を進めている。既に中国電力の島根原子力発電所における実証実験で同システムの効果を検証しており、2013年度中に製品化する計画だ。

 NECがさまざまなプラントの事故を調査したところ、「予兆とみられる現象がデータ上に現れているにもかかわらず、それに気付かなかったために対応が遅れたケースが目立っていた」(同社事業イノベーション戦略本部ビッグデータ戦略室主任の宮崎寛之氏)という1)。大規模プラント故障予兆監視システムの狙いは、その予兆を明確に可視化し、適切な対応を促すことだ。

 同システムの最大の特徴は、「インバリアント分析」と呼ばれるデータ分析手法にある。インバリアント分析では、プラントが正常に稼働している時に取得したデータに基づいて「健全な状態」を定義し、リアルタイムで取得したデータの挙動が健全な状態から大きく外れたことをもって「故障の予兆」と判断する(図4)。

〔以下、日経ものづくり2013年7月号に掲載〕

図4●「大規模プラント故障予兆監視システム」
黒い点はパラメータ、パラメータ同士を結ぶ線はその関係を意味する。黒色の線は正常、赤色の線は故障の予兆があることを示している。
[画像のクリックで拡大表示]

参考文献:1)吉田,「プラント事故に学ぶ効率化の代償」,『日経ものづくり』,2013年6月号,pp.31-45.

日本マイクロソフト
「Excel」で不良の要因をあぶり出す

 取得技術編(pp.38-41)でも紹介した通り、日本マイクロソフト(本社東京)はオムロンと工場のビッグデータ活用に関する事業で提携している。日本マイクロソフトは今後、主にビッグデータの分析を支援する製品に力を注ぐ方針だ。

 

 この分野での同社の強みは、「Microsoft Office」など工場の現場にも広く普及しているソフトウエア・ツールを持っていることだ。具体的には、大量のデータを蓄積するデータベース(DB)だけではなく、そのデータを分析するツールや、分析結果を共有するツールがあるので、ツール間のデータの受け渡しもスムーズに行える。

 例えば、検査工程などで撮影したワークの画像データを、それ以外の製造データとひも付けて個体単位でDB管理システム「Microsoft SQLServer」に格納しておけば、表計算ツール「Microsoft Excel」のアドオンである「PowerPivot for Excel」で、ワークの状態や製造データの関連情報を、そのラインで製造した製品の良否判定の結果と照らし合わせて統計的に分析する、といったことが可能だ(図6)。日頃使い慣れているExcel によって、比較的高度な分析を手軽に行えるのがポイントである。

〔以下、日経ものづくり2013年7月号に掲載〕

図6●Excelでのデータ分析
製造データや画像データを個体単位でひも付けて管理しておけば、表計算ツール上で手軽に統計的な分析を行える。写真は、表計算ツール「Microsoft Excel」のアドオンである「PowerPivotf or Excel」を用いて、不良品と判定されたものを分析している例。
[画像のクリックで拡大表示]

General Electric社
スマホやタブレットで現場を情報武装

 工場全体に分散しているさまざまな設備・機器のデータを集約し、一元管理するためのシステムとして広く導入されているSCADA(Supervisory Control And DataAcquisition)。一般に、SCADAのデータは監視センターなどで一部の人だけしか見られない運用になっていることが多い。何か異常が起きた場合、その人たちがデータに基づいて担当者に指示を出し、担当者はその指示に基づいて現場の対応に当たるのが普通だ。

 しかし、米General Electric(GE)社の子会社で工場向けITシステムを手掛ける米GE IntelligentPlatforms 社は、そうした常識を変えようとしている。「担当者が現場でデータを分析できれば、もっと適切な行動を取れるようになる」(同社SW & SVCS AutomationSoftware部門Intelligent SCADALeaderのMark Pipher氏)からだ。同社が開発したのは、スマートフォンやタブレット端末でSCADAのデータを分析できるアプリケーション(アプリ)「Real-time OperationalIntelligence(RtOI)」である

〔以下、日経ものづくり2013年7月号に掲載〕

*RtOIの導入は、GE Intelligent Platforms社の「Proficy CIMPLICITY」「同iFIX」といったSCADA製品を利用していることが前提となる。