2013年5月号からは、「250万件の特許で問題を解決する TRIZの日本式活用法」をお届けします。旧ソビエト連邦で生まれた問題解決理論のTRIZは、1990年代に日本でブームになった後に衰退しましたが、その間、日本独自の活用法が生まれて使いやすくなりました。その中身を解説します。

TRIZの「思想」と「手法」をひもとく

 第1回では、TRIZの具体的な内容に踏み込む前に、そもそもTRIZのような発想法がなぜ技術課題を解決する上で役に立つのかを説明した。今回からは、TRIZの具体的な考え方や問題解決に至る手法を見ていく。

 その前に1つ、あらためて明確にしておきたいことがある。本コラムのタイトルに「TRIZの日本式活用法」とあるように、本コラムの主題は、日本で生まれたTRIZの活用法を解説することにある。

 第1回でも触れた通り、TRIZは1996年に日本に上陸して一大ブームを巻き起こした後、急速に衰退した。先行して導入した企業が「難しくて使えない」と断念するケースが続出したのだ。しかし、その後、日本独自の活用法が生み出されたことにより、再び導入企業が増えていった。本コラムで日本式活用法を取り上げるのにはこうした背景がある。

固定観念を捨てる

 日本式活用法の最大の特徴は、TRIZを単独のツールとして扱うのではなく、他の問題解決法とうまく組み合わせる点にある。本稿の終盤でその内容について触れる。

 TRIZを使いこなすためには、その「思想」と「手法(ツール)」を理解することが欠かせない(図1)。思想というのは、技術者がTRIZを用いて問題解決に取り組む際に念頭に置くべき「考え方」のこと。一方の手法は、約250万件の特許を分析して得た結果に、いかにしてアプローチするかの具体的手段を指す。まずは思想から見ていこう。大きく2つある。
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕

図1●TRIZの全体構成
図1●TRIZの全体構成
TRIZの思想は、[1]思い込みをなくす、[2]本質機能を追求する、の2つが基本になる。TRIZでは、特許分析結果をどのように活用するかの具体的なアプローチ方法として3つを定義する。[1]問題の中にある矛盾からひもとく「矛盾の克服」、[2]技術が進化する過程に着目する「技術進化の法則」、[3] 解決したい問題の「機能」から“逆引き”する「科学的・工学的効果」である。

前古護(ぜんこ・まもる)
アイデア 代表取締役社長
日本電装(現デンソー)入社後、パーティクル低減や新製品立ち上げなどフォトリソ工程を主とした製造技術分野に従事。1990年に同社を退社。コンサルティング会社を経た後、2003年にTRIZを中核にプロジェクト・コンサルティングによる実務テーマ解決を支援する株式会社アイデアを設立。クライアント企業は国内外を含め380社に上る。2005年から大阪産業大学非常勤講師。2013年1月から日本TRIZ協会の副理事長。

桑原正浩(くわはら・まさひろ)
アイデア TRIZプログラム担当ディレクター
カヤバ工業(現KYB)でサスペンションの開発設計、オムロンで電磁リレーの開発設計やプロジェクトマネジメントに従事後、技術問題解決コンサルタントとして独立。現在、アイデアのTRIZコンサルタントとして、国内外企業の技術開発テーマの創造的問題解決に関するコンサルティングに従事。著作物は「効率的に発明する:ロジカルアイデア発想法TRIZ」(SMBC出版)、「使えるTRIZ」(日刊工業新聞社「機械設計」連載)など。