本連載もいよいよ最終回です。これまでに多くの思考法・手法を紹介してきましたが、難しいものはほとんどなかったはずです。事例として取り上げたハマノパッケージ(本社兵庫県姫路市)もこれらの思考法・手法を粘り強く用いることで、既成概念にとらわれず、貼り箱の本質的な価値は「贈り主の感謝が相手に伝わり、その感謝を長く感じてもらう」ことであることに気付きました。
今回は、その本質的な価値をコンセプトに落とし込み、さらにソリューション(製品)に展開する流れについて解説します。本連載で紹介した思考法・手法を用いて製品を開発すると、製品自体の造り込みよりも、それ以前の本質的な価値の追求に費やす労力の方がはるかに大きくなります。しかし、これこそがイノベーティブな製品を最小限の手戻りで開発するためのポイントになります。 最終段階では、これまでの検討内容を再確認するようにコンセプトやソリューションを作成します。説明の都合上、思考法・手法を順番に紹介してきましたが、これらの思考法・手法を行ったり来たりしながらプロセスを何度も繰り返すのが重要であることを念頭にお読みください。
欲求連鎖分析(WCA) 関係者の欲求を明確にする
第4回では、本質的な価値を明らかにするのに「バリューラダー」という手法を用いました。それによって本質的な価値は分かってきましたが、その価値が正しく顧客まで届くことを確認する必要があります。そこで、第3回で解説した「顧客価値連鎖分析」(CVCA:Customer Value ChainAnalysis)という手法により、この段階での価値連鎖を可視化しました。
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕
慶応義塾大学大学院 非常勤講師
慶応義塾大学大学院 准教授