米コネクタ大手TE Connectivity社の日本法人タイコエレクトロニクスジャパン(本社川崎市、以下タイコ)は2013年5月8日、新設した掛川工場の操業を開始した。新工場では、同社始まって以来の生産改革に踏み出した。その中身はトヨタ生産方式の導入と、開発から量産までの一貫プロセスの確立である(図1)。タイコ社長の江部秀氏は、「掛川工場という日本の拠点において、世界最高の品質と世界最高の価格競争力を実現していく」と胸を張る。

 コネクタは、タイコに限らず見込み(押し込み)生産が基本だが、コネクタは多品種で需要変動が大きく、大量の仕掛かり在庫を抱えるという課題があった。それを必要な分だけ造る後工程引き取り生産に変える。「コネクタ業界で引き取り生産を行うのは、おそらく世界初」(同社)。いわば「(押し込み生産の代表である)フォード式から、( 引き取り生産の代表である)トヨタ生産方式への大転換」〔タイコ自動車事業本部デマンドマネージメント(S&OP)統括部統括部長の山下浩史氏〕である。これにより、仕掛かり在庫の削減によるコスト削減と生産リードタイムの短縮を狙う。

 こうした生産体制を支援するのは、トヨタ生産方式の“総本山”といわれるトヨタ自動車生産管理部生産調査室だ。同室が、トヨタグループ以外の企業に対してトヨタ生産方式を指導することは極めて異例。タイコは外資系ながら、トヨタ自動車と40年以上の取引があり、その縁もあって支援を受けることになったようだ。
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕

図1●掛川工場の生産革新の概要
図1●掛川工場の生産革新の概要