今後、2020年から2025年にかけて、日米欧の先進国だけでなく、中国でも燃費規制の大幅な強化が進む。欧米の完成車メーカーや部品メーカーは、2020年代半ばまでに、高速道路での全自動運転の実現を目指す。世界の市場に向けて多様な商品を効率的に開発するため、プラットフォームの共通化や部品のモジュール化はこれまで以上に進む。これらの課題にどう向き合っていくのか。完成車メーカー6社の研究開発リーダーの発言から、2020年に向けた技術の潮流を占う。(鶴原吉郎)

Part1:攻勢に転じる国内メーカー

技術でリーダーシップを取り戻せるか
メガサプライヤーの影響力が強まる

グローバルに進む燃費規制の強化に対応するため、国内完成車メーカー各社はパワートレーンの電動化に力を入れている。ただ、世界のパワートレーン技術の潮流は必ずしも電動化に向かっていない。クルマの売れ行きを左右するようになってきた安全技術の開発や完成車メーカーが進めるモジュール戦略では、メガサプライヤーの影響力が増しそうだ。

 長く続いた円高の修正が進み、日本の自動車産業の2013年3月期の業績は大幅に改善した。トヨタ自動車が発表した2013年3月期の営業利益は、前期比約3.7倍の1兆3208億円。為替レートの動向によっては、2014年3月期の営業利益は2兆円を超えるとの観測もある。ここ数年、円高だけでなく、東日本大震災やタイの洪水、国内需要の減少などに悩まされてきた日本の自動車産業に、久しぶりに反転攻勢の機会が訪れたといえる。

各社がハイブリッド車を商品化

 しかし、日本の自動車産業がこのまま順風満帆だと判断するのは早計だろう。これからの成長を左右する研究開発において、日本メーカーの採っている戦略が奏功するかどうか、今の段階では予断を許さないからだ。

 例えば完成車メーカー各社にとって最大の研究開発テーマとなっている燃費向上技術。日米欧の先進国だけでなく、世界最大の自動車市場である中国でも2020年に5.0L/100km(20km/L)という燃費規制が最終的に決定し、先進国並みの燃費が求められることになった(図1)。この規制にどう対応するかで、日本のメーカーと海外メーカーでは大きく戦略が分かれている。

 国内完成車メーカーの多くは、2020年に向けて、パワートレーンの電動化に研究開発のリソースを集中する方針だ。確かに国内ではHEV(ハイブリッド車)は完全に市民権を得た。トヨタ自動車の、2012年の登録車販売台数に占めるHEVの比率は4割、ホンダの登録車販売台数に占めるHEVの比率も2013年1~3月で36%に達する。 

以下、『日経Automotive Technology』2013年7月号に掲載
図1 2020~2025年に向けて世界で燃費規制の強化が進む
図1 2020~2025年に向けて世界で燃費規制の強化が進む
日米欧中の各地域で進む燃費規制を、CO2排出量でまとめた。欧州規制の2020年95g/kmは長期目標値。2025年の値は、環境保護団体European Federation forTransport and Environmentが提案している2025年に60g/kmに低減する規制。日本の数値は燃費基準から逆算して求めた値。米国規制は、乗用車の規制値。中国では2015年に6.9L/100km(14.3km/L)、2020年に5.0L/100km(20.0km/L)の企業平均燃費の達成を求める規制が導入される。