2011年11月の東ソー南洋事業所、2012年4月の三井化学岩国大竹事業所、2012年9月の日本触媒姫路製造所と、相次いで発生した化学プラントでの死亡事故。なぜ重大事故は続いたのか。原因を追究していくと、化学プラントだけにはとどまらない、ものづくりの現場に共通の問題が浮かび上がってくる。(吉田 勝)

ドキュメント:日本触媒姫路製造所の爆発事故
知らぬ間に進んでいた発熱反応

 2012年9月29日13時20分ごろ、日本触媒姫路製造所の基礎化学品製造ヤードにあるアクリル酸製造施設において、中間タンク「V-3138」から白煙が上がっているのに運転員が気付いた(図1)1)

 運転員らは、すぐに放水を開始するとともに、13時40分ごろに所内の自衛防災隊に出動を要請。その数分後には網干消防署に通報した。14時ごろから自衛防災隊が放水を開始し、その直後に現場に到着した消防隊は所内に警戒線を張って消火活動を開始した。

中間タンクは一時貯蔵用

 アクリル酸の製造工程は、「粗アクリル酸製造」と、そこで生成した粗アクリル酸を精製して純度を高める「高純度アクリル酸製造」の2工程から成る。

 後者では、アクリル酸を精製・分離する複数の「精製塔」の底の方に、不純物の多い液、いわゆるボトム液が溜まる。通常、ボトム液は精製塔から直接「回収塔」に送られて再精製されるが、精製塔の停止時などにボトム液を一時貯蔵する場合がある。白煙が上がったのは、その際に使われる中間タンクだった。

試験に備えて「液溜め」

 ここで、時計の針を8日ほど前に戻してみよう。姫路製造所では9月18~20日に全施設の電力供給を遮断して電気・計装の保全工事を実施し、その後順次各設備を立ち上げていた。アクリル酸製造施設が運転を再開したのは同月21日だった。

 21日の運転再開後しばらくは、ボトム液を精製塔から直接回収塔に送っていたが、同月24日から一部の精製塔からのボトム液を中間タンク経由で送り始めた。この運転では、中間タンク内の液量は10m3程度に維持されていた。
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕

参考文献:1)株式会社日本触媒 事故調査委員会,「株式会社日本触媒 姫路製造所 アクリル酸製造施設 爆発・火災事故 調査報告書」, 2013年3月.