武州工業は、管を渦巻き形にできる曲げ加工機を開発した。例えば蓄熱槽の中に冷媒の管を通すとき、従来は蛇行形に管を曲げるしかないため、蓄熱槽が大きくなっていた。渦巻き状に曲げられれば管を密に並べることができ、蓄熱槽を小さくできる。暖房時の航続距離に悩むEV(電気自動車)設計者には一つの解決策になるかもしれない。

 EVの大きな弱点は航続距離である。特にヒータの消費電力が大きくなる冬場、航続距離は春秋より大幅に短くなる。エンジン車の熱効率が低く、その結果排熱が出てくることが、逆にうらやましくなるような状況である。

 この問題を解決しようと、多くの技術者がEVの暖房による電力消費の問題を解決しようと努力している。有望と思われるのが蓄熱である。充電のために地上の電源とつながっている間にヒータを作動させて蓄熱材を暖めておく。潜熱蓄熱でも顕熱蓄熱でもいい。電源を切り離し、走り始めてから、蓄熱材から熱を取り出して室内を暖める。これならヒータによる電力消費はない。

 蓄熱槽から熱を取り出すには、蓄熱槽内に伝熱管をはわせ、中を通る水を加熱する方式が考えられる。ラジエータに使うようなシェル・アンド・チューブ型の熱交換器ではコストが高くつく。当社は自動車用途とは別に、「エコキュート」「エコウィル」といった家庭用の給湯、空調機器に組み込む蓄熱槽、貯湯槽などの用途を想定して、この曲げ加工機の開発を進めている。現在は、蓄熱槽や貯湯槽では管を曲げた伝熱管を使っているようだ。

以下、『日経Automotive Technology』2013年7月号に掲載