クルマが楽しい会話を繰り広げながら事件を解決する。そんな小説が、作家の伊坂幸太郎氏が書いた「ガソリン生活」。朝日新聞の連載をまとめ、2013年3月に出版した。主人公は、緑色の“かわいい”マツダの「デミオ」。小説を書く中でしばらくクルマと向き合った伊坂氏に、クルマに対する考えを聞いた。(聞き手は清水直茂)

作家 伊坂幸太郎氏
作家 伊坂幸太郎氏
写真:宮原一郎

 クルマを主人公にした小説を書いておきながら申し訳ないのですが、私自身は「クルマ好き」ではありません(笑)。最初は蟻を主人公にしようと考えていました。でも、虫を主人公にした小説がほかにあると後で分かり、やめました。

 その代わりがクルマなのはたまたま。2010年ごろにアイデアを考えていたときにクルマが目に留まり、なにか面白くなりそうだと直感しました。あと、同じころに知り合いの子供が自動車メーカーに勤め始めたことや、タイヤメーカーで働いていることを聞きました。それでクルマしかないなと(笑)。

 デミオを選んだのは小型車にしたかったのと、ボディ色に緑色があったからです。緑色は可愛くて目立つし、主人公にふさわしい色だと思いませんか。

以下、『日経Automotive Technology』2013年7月号に掲載