2013年5月号から「メカ設計者も知っておきたい エレ設計のABC ~オーツ君の成長記~」をお届けします。いまやメカ設計者もエレクトロニクスと無縁ではありません。架空の設計現場を舞台に、製品開発をスムーズに進めるためのエレクトロニクス設計の基礎を解説します。

つないで試すを繰り返すエレ設計

 ほとんどの製品が電気・電子化されている昨今、もはや機械設計(メカ設計)と、回路設計や基板設計などのエレクトロニクス設計(エレ設計)は切っても切り離せない関係にある。特に、スマートフォンやタブレット端末のようなエレクトロニクス機器ではメカ設計者もエレ設計と無縁ではいられなくなった。

 ところが製品開発の現場では、依然として構造やレイアウトを考えるメカ設計と、電気・電子回路を考案するエレ設計との間に大きな溝がある。製品開発を主導する多くのメカ設計者は、電気・電子周りはエレ設計者に任せておけばよいとばかりに丸投げしている。そのため、後になってノイズの問題が発覚したり、グラウンド(GND)が十分に確保できなかったりと、手戻りが発生することが多いのが実情だ。

 だが、実はそうした手戻りは、メカ設計者がエレ設計の基礎的な知識を備えていればずいぶん減らせる。本連載では、架空の開発現場を舞台に、メカ設計者が身につけておくと役立つエレ設計の考え方と基礎知識について解説していく。

 主人公は、自動車部品を主に開発・生産するミヤモト製作所で機械設計を担当してきた若手技術者のオーツ氏。彼はある日、新製品事業の開発プロジェクトのリーダーを任された。タブレット端末にもノートPCにもなる薄型ノートPCを開発せよというのだ。メカ設計の経験しかなく、この新しい挑戦に少なからず不安を感じていたオーツ氏。相談に乗ってもらうべく、かつての恩師であるルーミン教授を訪ねた(図1)。
〔以下、日経ものづくり2013年5月号に掲載〕

図1●メカ設計者の悩み
図1●メカ設計者の悩み
製品のエレクトロニクス化が進み、メカ設計者もエレクトロニクスの基礎知識がないと製品開発をうまく進められなくなっている。

前田篤志(まえだ・あつし)
O2 Lab. リサーチフェロー
米国で高周波(RF)技術を教える傍ら、マネジメント要素を盛り込んだ独自の「RF Management」論を構築。現在は特許工学などの講義を基に、現象論に立脚したエレクトロニクス教育の啓蒙に努める。

【会社紹介】
O2 Lab.は、設計開発領域におけるコンサルティングを手掛けるO2の研究開発部門。ビジネスシーズを新規事業にまで育て上げる顧客専属の研究開発機関である。URLはhttp://www.o2-inc.com/lab/