2008年8月、ソフトウエア会社を経営するN氏は、自転車での通勤中に転倒し、重度の後遺障害を負った。
N氏はその後、自転車の設計に欠陥があったとして輸入業者を提訴する。東京地方裁判所は欠陥を認め、輸入業者に1億円超の損害賠償を命じた。

 事故は、2008年8月22日にN氏が自転車で自宅からオフィスに向かう途中で起きた。N氏は走行中に突如転倒し、重度の四肢麻痺を伴う後遺障害(第1級1号に相当)を負った。

 N氏が使っていた自転車は、イタリアBianchi社(スウェーデンCycleurope社の1部門)ブランドのクロスバイク「BACKSTREET」だ(図1)。ただし、Bianchi社は設計・製造していない。当時、Cycleurope社の日本法人であるサイクルヨーロッパジャパン(CEJ、本社東京)はエヌビーエス(本社堺市)にBianchiブランド製品の国内独占販売権を付与しており、それを基にエヌビーエスが企画・部品選定し、組み立てを台湾のメーカーに委託していた。それをCEJが輸入し、エヌビーエスが販売していたという構図である。

 クロスバイクは、ロードバイクやマウンテンバイクなどを含むスポーツバイクの一種で、舗装路の走行性能が高いロードバイクと悪路の走行に向くマウンテンバイクの長所を兼ね備えることが特徴だ。スポーツバイクの中では価格帯が低いため、初心者向けと位置付けられており、通勤に用いる人も多い。N氏も2002年に長野県飯田市の自転車店からWebサイト経由でBACKSTREETを購入し、通勤に用いていた。
〔以下,日経ものづくり2013年5月号に掲載〕

図1●Bianchi社のブランドが付いたクロスバイク「BACKSTREET」
図1●Bianchi社のブランドが付いたクロスバイク「BACKSTREET」
N氏が実際に使用していたもの。写真:みどり共同法律事務所