本誌2013年2月号の特集において、英Dyson社の遠心分離(サイクロン)方式の掃除機は高額でありながらも、基本機能である吸引力が持続する点で高い人気を誇ることを紹介した1)。半面、日本市場では、より軽い競合製品が店頭に並んでいることもあって「重い」(家電量販店)という声があった。

 この課題の解消を狙って、同社はコンパクトなキャニスター(床移動)型のサイクロン方式掃除機「DC48」を開発した。2013年3月28日に世界に先駆けて販売を開始したのが、日本市場である(図1)。

 新しい掃除機は、大きさと本体の質量を、従来機の「DC46」と比べていずれも30%小さくした。例えば、ブラシを回すモータをヘッドに組み込んだ(モータヘッド)タイプでみると、本体の質量を従来の4.1kgから2.8kgまで軽量化している。コンパクトにしつつも、吸引力は向上させた。新しい掃除機の集じん率は93.3%と、従来の89.6%から3.7ポイント高めている*1

専用モータで小さく

 従来の掃除機が大きく重かった最大の原因は、吸引力を得るために回転翼(インペラ)を回すモータにある。Dyson社は外部から汎用モータを購入して使っていた*2。そのため、コンパクト化には限界があった。モータが大きいと、それに併せて周辺部品も大型化してしまう。そこで、同社は新しい掃除機専用の小型モータシステム「デジタルモーターV4」を開発した。
〔以下、日経ものづくり2013年5月号に掲載〕

図1●コンパクトなサイクロン方式掃除機「DC48」
図1●コンパクトなサイクロン方式掃除機「DC48」
従来と比べて3割小さくした。価格はモータヘッドタイプで9万7800円(税込み)。

*1:従来機であるDC46と比べて音を40%低減させた点も特徴の1つ。

*2:掃除機用モータとして一般的なユニバーサルモータとみられる。

参考文献:1)近岡「もう1つの高付加価値設計 本質機能の一点突破」,『日経ものづくり』,2013年2月号,pp.38-41.