ムダとりコンサルタントの山田日登志氏が、ある食品メーカーの物流倉庫に足を踏み入れた。「うわ~、これはあかんっ」。思わず声を上げる山田氏。山田氏がそこで見たものとは?
2億円分の出荷在庫を減らせ
事例:セゾンファクトリー(高級食品メーカー)
山田氏が見たもの、それは山のように積まれた出荷在庫だった。
本題に入る前にまず、今回のテーマである工程カイゼンの位置付けを整理しておきたい。工程カイゼンとは、1つの物の流れに対して複数の工程にまたがるカイゼンのことを示す(図1)。2010年4月~2011年10月号の連載では主に、1工程内の人の動作に焦点を当てた「作業カイゼン」を主題にした。しかし実は、これを実施しているだけでは生産ライン全体の成果にはつながらない。作業カイゼンという“点のカイゼン”を幾つもつないで線として機能させることで初めて、カイゼン成果が現れる。この線のカイゼンこそが、今回紹介する工程カイゼンである*1。
出荷在庫はムダの温床
今回のカイゼンの舞台となるのは、山形県高畠町に本社を置く高級食品メーカー、セゾンファクトリーである(図2)。セゾンファクトリーの社名の由来は「季節の工場」。その名の通り、本社内にある工場は、常に日本全国から集められた季節の果物や野菜であふれ、それらの食材は工場内で、ジャムや飲料用の酢、ドレッシングなどに手早く加工されている。
そんな同社が、山田氏のカイゼン指導を本格的に受けるようになったのは、2012年8月のこと。同社代表取締役社長の齋藤峰彰氏が知人の紹介で山田氏の存在を知り、以前からの夢だった利益率10%を翌年までに達成しようと一念発起した*2。
〔以下、日経ものづくり2013年4月号に掲載〕
*1:ちなみに、線のカイゼンを積み上げると、工場全体の経営カイゼンが加速する。この部分は、第2弾の特別編で取り上げた。
*2:当時の利益率は3~4%だった。