設計者の能力を最大限に引き出す
前回(2013年3月号)は、QuickDRの実施手順を日産自動車(以下、日産)における適用事例とともに紹介した。最終回となる今回は、QuickDRだけではなく、新規性が高い設計に適用するFull Process DRも含めて、製品の不具合やユーザーの不満を未然防止する上で不可欠なレビューアの役割について解説する。
レビューアに必要な能力
有効なデザインレビューを実現するため、日産ではQui ck DRの導入とともに、デザインレビューにおけるレビューアの役割を見直し、それに必要なスキルの教育を開始した。デザインレビューで効率的に問題点を発見し、不具合などの未然防止を図るためにはエキスパートの知見、経験、洞察力が不可欠だからだ。
しかし、実際の設計現場を観察すると多くの設計者はデザインレビューに対して、「実施すれば有効だがやるのは大変だ」、「時間をかけて準備をしたあげく、レビューアにやっていないことを怒られて、たくさん宿題をもらった」というイメージを持っていた(図1)。それが「これは大して新規性が高くないから手を挙げるのをやめよう」というマイナスの考えへとつながる。その結果、デザインレビューを実施しないままに設計を進めてしまい、問題が発生していた。
設計者が喜んでデザインレビューに参加できるようにするためには、Quick DRという仕組みの導入だけではなく、そこに参加するレビューアの役割を見直すことも重要だ。問題を指摘し指示する役割だけではなく、デザインレビューに参加する設計者を助け、育成する役割を新たに追加しながら、レビューアに必要な能力を以下のように再定義した。
[1]問題点を見つけ出して解決する専門技術力、経験、洞察力を持つ
[2]デザインレビューのプロセスとツールを熟知する
[3]デザインレビューを受審する設計者の積極性を高め、育成するコーチング能力を有す
〔以下、日経ものづくり2013年4月号に掲載〕
ボッシュ シニア・ゼネラル・マネージャー
日産自動車 車両品質推進部 主管