「構造物の良否が直観的に分かる 力の流れを可視化する『U』」は今号で終了します。2013年5月号からは、旧ソビエト連邦で生まれた問題解決理論「TRIZ」の連載を始めます。1990年代にブームを巻き起こした後、あまり使われなくなった同理論について「実は使える本質と実例」をお届けします。

構造変更の効果の把握

 構造物の内部の力の流れを知ることは、剛性あるいは強度という数値自身と同様に重要である。それは剛性や強度の生じた理由を知ること、すなわちAwarenessを重視する考え方である。望ましい力の流れを追求すれば、結果として自ずと強度や剛性が上昇する。

 そのための指標であるU(Ustar、ユースター)1)について、前号(2013年3月号までの3回にわたり解説してきた。

 指標Uは負荷点と任意点との結合の強さを示す量であり、
[A]構造の全体像の把握
[B]構造変更案の提示
[C]構造変更効果の評価
といった構造検討に有効である。これらのうち、前号では[A]と[B]について解説した。

 今号(最終回)は[C]について述べ、締めくくりとしたい。
〔以下、日経ものづくり2013年4月号に掲載〕

高橋 邦弘(たかはし・くにひろ)
慶應義塾大学名誉教授
1967年慶応義塾大学工学部卒業、1973年工学博士(慶応義塾大学)。日産自動車勤務を経て1975年より慶応義塾大学。2010年名誉教授。専門は薄肉構造理論、特に自動車車体の構造解析、および極性物質の一般化連続体理論。指標U*の開発は本コラム第1回(2013年1月号)にも記載のある、山名正夫博士による指導が発端(電子メール:takahasy@mech.keio.ac.jp)。

参考文献:1)高橋邦弘,櫻井俊彰,「構造物内部における荷重伝達経路の新たな表現方法」,『日本機械学会論文集A編』,vol.71,no.708,pp.1097-1102,2005.