韓国Samsung Electronics社は、1997年に韓国がアジア通貨危機により国際通貨基金(IMF)の救済を受けた際に、倒産の危機に瀕していた。そのわずか15年後の2012年には売上高17兆円、営業利益2兆5000億円(利益率14.7%)と非常に大きな変身を遂げた。そして今、半導体、携帯電話機/スマートフォン、テレビといった製品分野の世界市場で、日本メーカーを大きく凌駕している。
こうした華麗な変身ができた最大の理由は、Samsung Electronics社が2000年以来のグローバリゼーションの動きに的確に対応し、世界各地のニーズを満たす製品を造り続けてきたことにある。
筆者は1994年から約10年間Samsung Electronics社に在籍し、同社が成功を収めるまでの過程を内部で直に見てきた。日本ではしばしば、ウォン安誘導や各種の優遇策など韓国の国を挙げての支援にその要因を求める声が上がる。だが、それだけではこれほどの成功と、同時に生じた電機分野を中心とする日本メーカーの地盤沈下を説明することはできない。
一方で、現時点では飛ぶ鳥を落とす勢いであるとはいえ、SamsungElectronics社もまた多くの弱点を抱えている。本連載では、SamsungElectronics社の事例を基に、日本メーカーが再び成長軌道を歩むために、どのような方向に進むべきかを考えていきたい。
〔以下、日経ものづくり2013年4月号に掲載〕
東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター