光の照射を止めても光を発するリン光材料で、全く新しい材料が発見された。従来材料では、室温においてリン光がほとんど発現しない、発現したとしてもミリ秒以下と極めて短い、というものだったのに対し、新しいリン光材料は室温で数秒間光り続ける。発見したのは、東京工業大学大学院生命理工学研究科分子生命科学専攻教授の湯浅英哉氏のグループだ。

 図1は、同グループが撮影した写真。左から、光の照射を止めた直後(0~1秒後)、1~2秒後、2~3秒後、3~4秒後、4~5秒後のリン光である。徐々に暗くなるものの、肉眼ではっきりと確認できる。用いた光は波長366nmの紫外光だが、市販の同400nmの青色LEDでも同様のリン光を示すという。

 これまでリン光材料といえば、有機錯体や無機化合物が主流だった。しかし、新しいリン光材料はそのいずれでもなく、「純粋な有機化合物」(湯浅氏)である。具体的には、樹脂の原料などとして広く用いられているイソフタル酸だ。室温で数秒間光り続けるリン光材料が存在することに加えて、純粋な有機化合物であるイソフタル酸がリン光を発現することもまた「発見」なのである。
〔以下、日経ものづくり2013年4月号に掲載〕

図1●新材料が発するリン光
波長366nmの紫外光を当てた。左から、光の照射を止めてから0~1秒後、1~2秒後、2~3秒後、3~4秒後、4~5秒後のリン光。
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