本誌が1年半前に報道した、パナソニックの「温水を流すと発電する配管」が実証段階に入った1)。京都市左京区のごみ処理施設「東北部クリーンセンター」において2013年3月から始めた検証試験で、性能や耐久性などを調べる*1。同社では、この検証試験を足掛かりに「2018年の事業化を目指す」(同社R&D本部先端技術研究所の山田由佳氏)。実用化されれば、無駄になっていた小規模な低温廃熱を有効活用できる。

 この発電する配管「熱発電チューブ」は、ビスマス-テルル(Bi-Te)系の熱電変換材料とニッケル(Ni)を軸方向に交互に積層してパイプ状にしたもの(図1)。パイプの中に温水を通し、外側を冷水で冷やすと、内外の温度差で発電する。Bi-TeとNiを斜めに積層してあり、軸方向に起電力が生じるのが特徴だ。

 検証試験では、同センター内に数本の熱発電チューブから成る熱発電ユニットを設置した(図2)。これまで同センターでは使い道のなかった140℃程度の蒸気を利用して約90℃の温水を生成し、これを同ユニット内のチューブの中に流す。一方、冷水は同センターの冷却塔で使っている10℃の純水を利用する。

 同ユニットには、外径14×内径10×長さ200mmのチューブを最大10本内蔵でき、体積当たりの発電能力は400W/m3以上と、π型熱電変換素子*2のおよそ8倍高い。検証試験では、このユニットを複数台接続して100~200W程度の発電を試みる。
〔以下、日経ものづくり2013年4月号に掲載〕

図1●熱発電チューブ
図1●熱発電チューブ
Bi-Te系の熱電変換材料とNiを積層してパイプ状にしてある。写真の試作品は長さ100mmで、外径は14mm、内径は10mmである。熱を効率的に利用するにはこの径が適しているという。
図2●検証試験に用いる熱発電ユニット
図2●検証試験に用いる熱発電ユニット
温度差が80℃なら、長さ200mmの熱発電チューブを10本内蔵した熱発電ユニット1つで、50W程度の出力が見込める(a)。(b)は同ユニットの模型。シンプルな構造で駆動部などもないため、メンテナンスが容易である。

*1:検証試験は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「省エネルギー革新技術開発事業」として2013年度末まで実施する予定。

*2:π型熱電変換素子 p型とn型の熱電変換材料を交互に多数並べて接続したもの。

参考文献:1)吉田,『温水を流すと発電する配管 パナソニックが材料を「斜め積層」』,『日経ものづくり』,2011年9月号,pp. 25- 27.