約15年にわたって日本が苦しめられているデフレや、リーマンショック以降急激に進んだ円高は、日本銀行の失策が招いた「人災」だ―。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士氏はこう指摘する。(聞き手は鶴原吉郎)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済・社会政策部 主任研究員 片岡剛士氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済・社会政策部 主任研究員 片岡剛士氏

 円高は日本の貿易黒字が生み出した「自然現象」であって経済政策ではどうにもならない、デフレは少子高齢化や就業人口の減少がもたらした需要減が主な原因だから甘受するしかない―。こんなことを主張する人たちがいまだにいるが、世界の経済学の常識ではすべて否だ。

 現在の標準的な経済学によれば、長期的な為替レートは、購買力平価説に基づいて決まるとされている。購買力平価説とは、同じ品質の製品、同じ満足度が得られるサービスは、どこの国でも同じ価値になる、という考え方だ。この考えに基づけば、国Aで物価が上がり、国Bで物価が下がれば、この物価変動と釣り合うように、国Aの通貨の交換レートは国Bの交換レートに対して下落することになる。

以下、『日経Automotive Technology』2013年5月号に掲載