市場における不具合/不満の発生を未然に防止するには、開発プロセスにおけるデザインレビューが不可欠です。「Quick DRを始めよう」では、設計の変更点/変化点に着目することで迅速かつ簡便に実施できるQuick DRの特徴と進め方について解説します。

4つのステップ

 今回は、日産自動車(以下、日産)の新車開発プロジェクトにおいてQuick DRを適用した具体的な事例を紹介しながら、Quick DRの実施手順について解説する。

適切な課題を選定

 まず、Quick DRのおおまかな実施手順について説明しておこう。Quick DRは、ステップ1:リスクアセスメント、ステップ2:準備段階、ステップ3:レビュー段階、ステップ4:実行段階、で構成される(図1)。なお前回(2013年2月号)紹介した標準ツールは、ステップ1~3で活用する。具体的には、ステップ1:リスクアセスメントで「リスクアセスメント・シート」を、ステップ2:準備段階では「変更点一覧表」と「DRBFMワークシート(準備段階)」を、ステップ3:レビュー段階で「DRBFMワークシート(レビュー段階)」を使う*1

 以上の4ステップに沿って、実際の新車開発プロジェクトにおいて日産が取り組んだQuick DRの事例を紹介しよう。この事例ではQuickDRの狙い通り、短期間で多くの問題点を発見し、不具合の発生を未然に防止できたため、日産社内においても改めてその有効性が認識された。

 デザインレビューの対象はパドルライトと呼ばれる足元照明システムである。夜間や地下駐車場などの暗い場所で、キーを携行したユーザーがクルマに近づくと、センサがキーの接近を感知し、専用のライトがユーザーの足元を照らして暗い場所での乗車をサポートするものだ。
〔以下、日経ものづくり2013年3月号に掲載〕

図1●Quick DRの4ステップ
図1●Quick DRの4ステップ
Qui ck DRの実施手順は、ステップ1のリスクアセスメント、ステップ2の準備段階、ステップ3のレビュー段階、ステップ4の実行段階、の計4ステップで構成される。ステップ3までを図面発行前に完了しなければならない。

*1:Quick DRでは一般的なDRBFMワークシートに変更を加えて、準備段階のワークシートとレビュー段階のワークシートに分けて標準化している。

大島 恵(おおしま・めぐむ)
ボッシュ シニア・ゼネラル・マネージャー
1976年日産自動車入社。主に強度信頼性設計、実験、振動騒音開発に従事。2005年から車両品質推進部部長、品質エキスパトリーダー。設計品質の向上活動に取り組み、日産自動車独自の品質手法を開発し、日産自動車および関連会社に展開して実践する。2012年から現職となり、設計品質の向上を指導。

奈良 敢也(なら・かんや)
日産自動車 車両品質推進部 主管
1987年日産自動車入社。主として、品質、信頼性向上、安全部品設計に従事。2006年からは慶応義塾大学理工学部 非常勤講師( 品質工学、実験計画法)、2009年から車両品質推進部主管。