日本企業の中国生産や中国調達が曲がり角を迎えている。これまで、多くの企業がコスト削減や現地需要の取り込みを目的に中国での生産や部品調達を推進してきた。しかし、人件費の高騰に加えて、他産業への転職で人材の確保自体が困難になっていることなどから、そうした目的を達成できなくなりつつあるのだ。

 実際に中国で生産する企業からは「人材を育てても以前より早く辞めてしまうので、品質を保つのが難しく、そのためのコストがかさんでいる」〔特殊発條興業(本社兵庫県伊丹市)取締役執行役員、管理本部長兼経理部長の渡部達彦氏〕という声が出てきた。中国で部品調達している場合も調達先がそのような状況であれば、やはり調達コストなどにしわ寄せが来ることになる。

受け皿となる日本

 従って、一部の企業は中国の外に目を向け始めている。その受け皿は、主に2つある。1つは今後の成長が期待できる東南アジア、もう1つは日本だ(表)。

そのうち東南アジアについては、ソディック、東洋電機、ヨコオなどが中国生産の一部を分散させる計画を公表している。東南アジアに移管する目的は、以前の中国進出時と同じコスト削減や現地需要の取り込みに加え、中国での反日デモや災害といったリスクへの備えもある。
〔以下、日経ものづくり2013年1月号に掲載〕

表●中国生産/中国調達を見直す動き
表●中国生産/中国調達を見直す動き
現地需要の取り込みやコスト削減を目的に東南アジアに移る動きと、QCDの向上を目的に日本に回帰する動きがある。本稿では後者を取り上げる。★が付いているのは本稿で紹介する事例。