最先端の半導体開発は、北米ではなく、アジアが担う─。このような構図が、いよいよ鮮明になってきた。半導体回路技術の国際会議「IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)2013」の採択論文数を見ると、アジアの躍進が目立つ。これまでアジアでは主に韓国が伸びていたが、今回のISSCC 2013では日本が健闘している。一方、これまで採択論文数で常に上位にいた米Intel社や韓国Samsung Electronics社は、今回大幅に論文数を減らしている。

半導体回路技術の開発はアジアが牽引

 最先端の半導体回路技術が集う国際会議「IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)2013」が2013年2月17~21日に米国サンフランシスコで開催される。今回で60周年を迎えるISSCCは、最新の半導体技術動向に加え、半導体産業の動きを知る上でも重要なイベントとなっている。例えば、前回のISSCC 2012では、ISSCCの歴史上、初めてアジアの採択論文数が北米を上回った。これは先端の半導体開発を牽引する地域が、北米からアジアにシフトしつつあることを示している。

 今回のISSCC 2013では、この傾向が一層鮮明になった。アジアの採択論文数が大幅に伸び、北米や欧州との差が広がったのだ。採択論文数の地域別比率を見ると、アジアは前回に比べて4ポイント増の40%とトップを維持した。これに対し、北米は同1ポイント増の35%、欧州は同6ポイント減の24%となっている。アジアが先端半導体の開発で世界をリードしていることを改めて印象付ける結果といえる。

日本は存在感を保てるか

 アジアの中では、これまで主に韓国が採択論文数を伸ばしていたが、今回のISSCC 2013では日本の健闘が目立っている。日本の採択論文数は、前回3位だったが、今回は2位に返り咲いた。さらに、世界のISSCC委員が選ぶハイライト論文の中にも、日本の論文が多く含まれていた。「日本から優れたアイデアや技術が多数登場しており、半導体開発における日本の存在感は依然として大きい」(ISSCCのFar East Chairを務める東京大学 准教授の池田誠氏)といえそうだ。

 ただし、日本の半導体メーカーは業績不振による開発予算の削減を迫られている。今回のISSCCではその影響はまだ見えていないものの、今後も開発予算の縮小が続けば、日本の技術力がいずれ失われることは明白であり、「早急に手を打つ必要がある」(池田氏)といえる。

 技術分野別に見ると、アジア、北米、欧州のそれぞれで得意分野が分かれている。アジアの採択論文数が多い技術分野は、高性能デジタルやメモリ、低電力デジタルなどだ。一方、北米は有線通信分野で圧倒的な存在感を見せている。欧州は将来技術を扱うテクノロジー・ディレクションでの発表が多い。

『日経エレクトロニクス』2013年1月7日号より一部掲載

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