市場における不具合/不満の発生を未然に防止するには、開発プロセスにおけるデザインレビューが不可欠です。「Quick DRを始めよう」では、設計の変更点/変化点に着目することで迅速かつ簡便に実施できるQuick DRの特徴と進め方について解説します。

設計の変更点/変化点に着目する

 市場における不具合や不満の発生を未然に防止するために、ほとんどの企業が製品の開発プロセスの中でデザインレビューを実施している。しかし、デザインレビューが必ずしも有効に機能しているとはいえないのではないだろうか。

 日産自動車(以下、日産)では現在、一般的に行われている従来型のデザインレビュー(これをFull Process DRと呼んでいる)と使い分ける、もしくは組み合わせる形で、もう1つのデザインレビューを活用している。それが、本連載の主題である「Quick DR」である。日産では2008年からQuick DRを含めたデザインレビューを標準プロセスとし、2011年末までに10カ国11拠点の約5700人を対象とした研修を完了している。

 本連載では、Quick DRの考え方や進め方、デザインレビューを実践する上で重要なレビューアの教育などについて解説する。初回となる今回は、日産でQuick DRが生まれたきっかけと、その概要について取り上げる。
〔以下、日経ものづくり2013年1月号に掲載〕

大島 恵(おおしま・めぐむ)
ボッシュ シニア・ゼネラル・マネージャー
1976年日産自動車入社。主に強度信頼性設計、実験、振動騒音開発に従事。2005年から車両品質推進部部長、品質エキスパトリーダー。設計品質の向上活動に取り組み、日産自動車独自の品質手法を開発し、日産自動車および関連会社に展開して実践する。2012年から現職となり、設計品質の向上を指導。

奈良 敢也(なら・かんや)
日産自動車 車両品質推進部 主管
1987年日産自動車入社。主として、品質、信頼性向上、安全部品設計に従事。2006年からは慶応義塾大学理工学部 非常勤講師( 品質工学、実験計画法)、2009年から車両品質推進部主管。