達人が持つノウハウを対話によって明らかにする「熟練者のノウハウを引き出す対話術」は、今号で終わります。2013年2月号からは、創造的なアイデアを発想・可視化・収束させるための最新の方法について、新規事業創出の実例に基づいて解説します。

 達人の知恵(知識を活用できる能力)を引き出すための対話では、過去の実例などの具体的な話をベースとして業務内容を明らかにし、ノウハウのエッセンスを抽出して論理的な関係や構造を見いだしていく。その上で、知恵を他のメンバーに移転できるよう、ノウハウを再利用可能な形にするために、論理的に分解することや足りない部分を補完することが必要である(図1)。

 前回(2012年12月号)では、ノウハウの論理構造を明らかにするところまでを解説した。検討業務のノウハウは4つの要素、すなわち
・参照情報(インプット):検討のための判断材料(前工程の結果を含む)
・結論(アウトプット):検討によって決まる情報
・検討項目:検討の具体的な内容
・検討の単位:どの固まりで検討するか、検討対象(部品など)の範囲や、一括して扱う検討項目のグループ
──によって構成される今回解説する論理的な分解や補完は、この4つ全てで必要になる。
〔以下、日経ものづくり2013年1月号に掲載〕

図1●ノウハウを整理して再利用可能に
図1●ノウハウを整理して再利用可能に
現状のやり方を達人から引き出して、その論理的構造を明らかにした上で、整理または精緻化して再利用可能な形にする。

小林紀知(こばやし・のりとも)
インクス 事業企画室 ウィズダム・エンジニアリング・リーダー
2002年インクス入社。ソリューション事業部にて多様な業界の業務変革プロジェクトを手掛けた後、変革手法を体系化して「ウィズダム・エンジニアリング」へとまとめ上げた。価値創造へと向かう知識と知恵の在り方、組織ダイナミクスについて探究している。