2011年11月13日、東ソー南陽事業所で爆発事故が起きた。事故原因を想定した設計や作業になっていなかったために、現場で対応に当たっていた従業員1人が死亡した上、劇物漏洩の疑いや火災といった大きな被害をもたらした。

 事故が起きた場所は、山口県周南市にある東ソー南陽事業所の「第二塩化ビニルモノマー製造施設」だ(図1)。爆発による火災がほぼ1日にわたって続いた他、一時は劇物である塩化水素(HCl)の漏洩が疑われたことから同市および隣接する同県下松市の住民に対して屋内待機要請が行われる事態に陥った。

 その後、同社は社内関係者5人と社外有識者5人の計10人から成る事故調査対策委員会を設置し、同委員会は事故原因の特定と再発防止策の立案を行った。調査で浮き彫りになったのは、爆発の要因となったガスの生成する可能性が全く考慮されておらず、施設の設計にも不十分な点があったために、結果として現場の対応が被害を拡大させてしまったということだ。
〔以下,日経ものづくり2013年1月号に掲載〕

図1●爆発した塩酸塔還流槽
図1●爆発した塩酸塔還流槽
爆発によって鋼板製の外壁が激しく損壊した。 写真:東ソー