数年前、民生分野で大きな盛り上がりを見せた「3D」技術。しかし、その取り組みは思うように成就していないのが現状だ。多くのエレクトロニクス企業に“くすぶっている”3D関連技術を生かす道は、医療にある──。その萌芽が、2012年11月にドイツで開催された世界最大の医療機器展示会「MEDICA 2012」に見えた。

3D技術の活用が大きなトレンドに

 あちらにもこちらにも「3D」──。まるで、数年前の「CEATEC JAPAN」や「International CES」などの展示会と見まごう光景が、そこに広がっていた。2012年11月14~17日にドイツのデュッセルドルフで開催された世界最大の医療機器展示会「MEDICA 2012」では、医療機器の分野で3次元(3D)映像技術の活用が大きなトレンドになっていることが浮き彫りになった。

 これまで、民生機器分野で3Dやその周辺技術を培ってきたエレクトロニクス関連企業にとっては見逃せない動きである。医療機器分野に乗りだすことで、自らの強みを生かせる領域が拡大する可能性があるからだ。実際、今回のMEDICAでは、ソニーやパナソニックといった企業が、医療機器分野で3D活用が進みつつあることに対応した、さまざまな提案を果敢に繰り広げた。

特に内視鏡で活発に

 一口に医療機器と言っても、実に幅広い。MEDICA自体も、実験装置や診断薬、整形外科技術、医療用備品、ディスポーザブル用品、病院用設備、手術用具などに加え、モバイル型医療/健康装置やICT活用の医療/健康システムなど、極めて幅広い領域の医療関連機器を取り扱う展示会だ。この中で今、3D技術活用への模索が最も目立つ注目すべき機器は、内視鏡である。

 内視鏡には、3D技術活用への極めて高い現場ニーズがあるという。「内視鏡手術時に3D映像を利用すれば、縫合時の位置関係などが把握しやすくなる。その結果、手術のスピードが速くなり、患者の負担も軽減できる」(ある医療機器メーカー)。さらに、顕微鏡を用いた手術などに対して内視鏡手術の件数は圧倒的に多い上に、世界的に今後の手術件数の増加が見込まれているなど、市場規模も比較的大きい。

 この内視鏡への3D技術活用に関しては、大きく二つの動きがある。(1)内視鏡自体の3D化(3D対応内視鏡の開発)、(2)3D対応内視鏡で取得した画像を扱う周辺機器の開発、である。

『日経エレクトロニクス』2012年12月24日号より一部掲載

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