雑誌 特集

日常をぶち破れ!

発想の新潮流

高橋 史忠=日経エレクトロニクス
2012/12/07 09:00
 

第1部<社会の動き>
企業の枠を超える
新アイデアは日常の外に

発想のタネを獲得するための新しい潮流が広がっている。カギは日常の開発業務の常識から抜け出し、自ら変化を体現することだ。社内に答えはない。従来の枠組みにとらわれない活動がイノベーションにつながる。

BOP市場向けの製品、アイデアは浮かびますか
ナインシグマ・ジャパンが募集したBOP(base of the pyramid)市場向け技術の主な要件。最大の制約は価格だ。1500~5000円程度で製品化できる技術を求めた。

 1冊の本がある。

 書名は『アイデアのつくり方』。米国の広告業界で活躍したJames W. Young氏が約70年前に記した名著である。

 どうすれば新しいアイデアを発想できるか──。書名の通り、Young氏の体験談に基づく発想法を極めて簡潔に解説している。発想力を巡る悩みは古くからの普遍的な命題だ。それと同時に、業績不振にあえぐ国内エレクトロニクス・メーカーの「今」を表す。

 世界的な景気の減速や円高など、国内のエレクトロニクス業界を取り巻くビジネス環境は厳しい。ただ、不振の理由は、環境の変化だけではないとの指摘は多い。新しい発想のヒット商品が生まれなくなった。これが大きな要因だと。つまり、アイデアを着想し、具現化する力の不足である。

カギは日常からの脱却

 では、そもそも「アイデア」とは何か。Young氏は、こう定義している。「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」。何もない状態から新しい発想は降りてこない。重要なのは、既存の要素をつなぎ合わせる新たな関連性を見つけ出すことというわけだ。

 新技術が日々生まれている技術開発の現場から急に着想のタネがなくなったわけではないだろう。課題は多くのタネを結び付け、イノベーションにつなげる発想力にある。

 この力を磨くための新しい潮流が、静かに、だが急速に世界規模で草の根的に広がり始めている。それは、複数の要素を結び付けるために必要な「気付き」を、日常生活とは全く異質の体験や文化に求める変化だ。キーワードは「日常の開発業務からの脱却」である。

 代表例は、社会的な課題を解決する活動を手掛けるNPO(非営利組織)と企業の協業だ。自分が得意な専門分野の技術スキルをボランティアの個人ベースでNPOの活動に提供しようという技術者も増えている。

『日経エレクトロニクス』2012年12月10日号より一部掲載

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第2部<気付きの風景>
発想を磨くダイアローグ
非日常空間で着想を得る

日常業務では会うことのない人々から多様な意見を聞き、発想を広げる。これを目的にしたダイアローグ(対話)を実施するイベントが増えている。実際のイベントを例に「気付き」を得る対話の様子をのぞいてみよう。

 2012年11月16日、午後3時。東京都内の会場で開かれたイベントに、ものづくりに興味を持つ約60人のビジネスパーソンが集まった。その肩書はさまざまだ。大手エレクトロニクス・メーカーの技術者や企画担当者、研究開発部門のマネジャーなどを中心に、人事担当者、経営戦略部門の担当者、自動車メーカーの開発担当者、ベンチャー企業の経営者といった幅広い人々が参加した。

 イベントの名称は、「発想をみがく“ものづくり”ダイアローグ」。大手エレクトロニクス・メーカーの社員が立ち上げたサラリーマン企画集団「かなりあ社中」が主催した。副題は「ワクワクする開発とは何か」である。

 「答えが見つからない時代に、製品やサービス、ビジネスモデルを考える面白さは、どこから生まれてくるのか」。このテーマについて、参加者が4時間にわたって対話しようという取り組みだ。イベントは、多くの企業人のボランティアによる協力で実現した。

 ここで言う「対話」とは「議論」ではない。英語の「dialogue(ダイアローグ)」を意味する訳語である。特定のテーマについて他の参加者の意見を丁寧に聞き、その意見が意味する内容を共有することが目的だ。

発想の気付きに効果

 相手を尊重し、信頼し合うことを起点にコミュニケーションを始め、相手のことをよく知り、相互にサポートする行動につなげる。アイデアという観点では、新しい発想の「気付き」を獲得したり、組織(チーム)が目指す方向性のコンセンサスを築いたりするような場合に効果がある。特に、今回のイベントのような企業や組織の枠を超えた多様な参加者によるダイアローグでは、日常の業務では得られない新しい発想の気付きを期待しやすい。

『日経エレクトロニクス』2012年12月10日号より一部掲載

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第3部<ひらめきの方法論>
まずは会社の殻を脱ぎ捨てる
「考え続ける」が道を開く

「非日常」に触れる体験を実現するハードルは、実はそれほど高くない。そのための手段は、意外に身近なところに転がっている。「会社」という組織の殻を脱ぎ捨てて、外に出ることが大切だ。

 日常の開発業務の常識から抜け出し、いかに新しい発想のタネを獲得するか。第1部では、このための新しい潮流を、途上国のBOP(base of the pyramid)ビジネスのような究極の制約条件における発想の体験や、市井の発明家や開発者のような従来とは異なる人々との交流などを例に紹介した。

 もちろん、多くの人々が、誰でもこうした体験を得られるとは限らない。ただ、普段とは異なる「非日常」を体験し、新しい気付きにつながる環境は国内でも草の根的に広がり、意外に身近なところにある。第2部で見たダイアローグ・イベントの取り組みは代表的な例の一つだ。

 例えば、打ち合わせや会議などをいつもの社内の会議室ではなく、別の場所で開催する。とにかく多くのアイデアを発想する連想法を自ら考えてみる。あるいは、自分の技術開発のスキルを用いてボランティア・ベースの開発プロジェクトに貢献する。こうした体験で他の分野や企業の技術者、ビジネスパーソン、経営者などと触れ合い、何らかのテーマについて対話することは、回り回って自らの開発業務にも生きてくる。第3部では、その方法論や具体例の一端を紹介していこう。

『日経エレクトロニクス』2012年12月10日号より一部掲載

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