2012年9月~2013年2月号では「労働災害を防ぐ安全技術」をお届けします。最先端の動向や国際規格に基づいたグローバルに通用する安全確保について、安全のスペシャリスト集団である安全技術応用研究会が解説します。安全管理者はもちろん、機械の設計者や生産技術者も必読です。

国際規格に沿ってリスクを低減

 今回から2回にわたって、実際の企業におけるリスクアセスメント(RA)の事例を紹介する。今回取り上げるのは、ガラス製品やセラミックス製品などの製造を手掛けるメーカー(以下、A社)の事例である。

RA導入の経緯

 A社は、1997年にRAの全社的な導入を決めた。A社には、安全管理に関わる部門として、機械の要求仕様を決定する設備所管部門、要求仕様に基づいて機械を設計・調達・保守する設備管理部門、および労働安全を含む管理全般を担当する安全管理部門があり、各部門が一体となって安全管理を担っている。そうした中、経営トップの方針に基づいてRAが安全管理の根幹に位置付けられた。

 それに伴い、RAに関する国際規格や先行企業の情報を入手するなど導入準備を始めた。既に機械安全の基本規格であるISO12100に沿った設備安全基準は整備・展開されていたが、RAに関する規格ISO14121はその時点で発行されておらず、手探りでの導入だった。

 全社にRAを展開するには、基本教材の作成と活動の中心的役割を担うインストラクターの育成が不可欠である。基本教材は、当時入手可能なあらゆる情報を基に作成した。その基本教材を用いて全工場で教育を行い、1998年から各工場出身のインストラクターが現場でRAを指導できるようになった。

〔以下、日経ものづくり2012年12月号に掲載〕

安全技術応用研究会
「安全は技術で構築すべき」という強い意思の下、産官学から安全技術のスペシャリストが終結し、1992年に創設された。安全技術のための基本的論理の研究、基本論理に適合した安全機器の開発、国際安全規格への働き掛けなどにより、安全機器の標準化や生産現場への普及に努めてきた。出版/研究発表/講習会を通じた情報発信も積極的に行っている。現在は、約60社の会員企業で構成されている。