2012年4月22日の午前2時15分ごろ、三井化学岩国大竹工場(山口県・和木町)で大音響とともにプラントの一部が爆発した。付近にいた社員らが巻き込まれ1人が死亡。飛散した高温の化合物を浴びたり骨折したりなどして、工場内にいた社員および協力会社の9人が重軽傷を負う大惨事となった。

 事故を起こしたのは、タイヤの接着剤などに使われるレゾルシンを製造するプラントの酸化反応器。爆発の威力はすさまじく、近隣の民家や隣接するJX日鉱日石エネルギーの麻里布製油所でも窓ガラスが割れるなどして、工場外でも16人の軽傷者が出た。

 爆発によって引き起こされた火災は、同工場内のサイメン製造プラントなどにも延焼した上に、周辺の15プラントが爆風や飛来物により損傷。この他、工場外の家屋損傷が999件にも上った。

 事故後、三井化学は学識経験者や専門家などの第3者で構成する事故調査委員会を設置して原因究明に当たった。

酸化反応器が破裂

 問題のプラントは、もともとレゾルシンを含む複数の化学物質の製造設備として1980年に操業を開始した。その後、設備を新設し、1999年にはレゾルシン製造の専用プラントとして稼働した。レゾルシンの製造工程の概要は以下の通りである。

 まず[1]原料となるメタジイソプロピルベンゼン(m-DIPB)を空気中の酸素で酸化して、中間生成物としてジヒドロキシパーオキサイド(DHP)およびヒドロキシハイドロパーオキサイド(HHP)という2種類の有機過酸化物を生成する。次に[2]中間生成物であるHHPを酸化して全てDHPにした上で、[3]クリベージと呼ぶ工程でDHPをレゾルシンとアセトンに分解する。最後に[4]蒸溜および晶析によって不純物を分離する精製工程を経て最終製品となるレゾルシンを得る。

〔以下,日経ものづくり2012年12月号に掲載〕