左の写真のように、手を軽く開いて指をグッと押し付ける。すると、グググッと滑らかに沈み込んで指の形になじむ。その後、手を離しても手形がくっきりときれいに残って、しかも硬く固まる──。

 小さなパットかマットのように見えるこの黒い物体。実はこれ、ある生産設備に取り付けて使うモノ。既にトヨタ自動車のエンジン工場で採用されるなど、実績は折り紙付き。「超円高」に負けないコスト削減にまい進する同社の生産革新をも支えているのだ。とはいえ、使用場所は自動車工場に限らず、幅広く使える。

 通常は傷を防ぐために、右の写真のようにカバーに入れて使うこの黒い物体、一体何だろうか。形状を転写し、その形状をカチンカチンに固まって維持する機能を持つ。粘土とは違って、形状転写と固化を任意のタイミングで繰り返し行えるため、工場でとても重宝する。

〔以下、日経ものづくり2012年12月号に掲載〕