欧州ジャーナリストの視点
フリーランス・ジャーナリスト Ian Adcock氏
英国在住。『What Car』『Autocar』『Motor』などの自動車専門誌の編集者を経て、1980年からフリーに。自動車技術専門誌の『European Automotive Design』誌に寄稿するなど技術にも詳しい。

 英Jaguar Cars社が、象徴的なスポーツカー「Eタイプ」をジュネーブモーターショーに出展してから半世紀以上が経った。同車は、かつてEnzo Ferrari氏をして「これまでにデザインされた最も美しいクルマ」と言わしめ、1966年にはニューヨーク近代美術館(MOMA)の永久展示品となる栄誉に浴した6台のうちの1台にも選ばれた。
 2012年9月のパリモーターショーで発表された「Fタイプ」は、恐らくこうした栄誉を受けることはないだろう。しかし、Ian Callum氏のデザインは、フロント側の処理が多少重さを感じさせるとしても、プロポーションやリアビューが美しいことに異論はない。
 完全にアルミニウム(Al)合金で構築された車体は、JaguarブランドのディレクターであるIan Hoban氏によれば「第4世代のアルミニウム・アーキテクチャー」であるという。この新型2シーターモデルは、開発チームが社内的なベンチマークとしていた「XKR-S」に比べて、車体のねじり剛性が10%向上している。
 完璧な車体を構成するためのコアとなったのが「Bポスト・ノード」(Bピラーの下半分)と呼ばれる鋳物部品である。これは、フロアパネルに取り付けて荷重を伝達する部品であるだけでなく、ルーフ開閉機構や、横転時に乗員の頭部を守るフレームを支える重要な部品である。

以下、『日経Automotive Technology』2013年1月号に掲載