2012年10月~2013年1月号では「生産性2倍も夢じゃない ボトルネックを見える化」をお届けします。科学的なアプローチによって生産性を見える化し、その低下要因を潰していく「VPM」を解説します。その考え方は、製造現場はもちろんのこと開発部門にも適用できます。

付加価値を高める改善テーマの探し方

 科学的改善手法であるVPM(Value Producing Management)の根幹を成す生産性の考え方を前回紹介した。すなわち、生産性を「能力(能率)」と「効率」に分解し、特に能力を中心として改善を進めるという考え方である。その際、VPMでは生産性を指標として見える化するが、単に見える化するだけでは不十分だ。見える化の対象となる生産性の指標が、本当に生産活動の実態を捉えているか否かを、理知的にかつ直感的に俯瞰してみることが重要となる。

 直感的というと違和感を覚えるかもしれないが、ここでいう「直感」とは工程を熟知した技術者や作業者が長年の経験に基づいて感じ取るものなので、とても有用である。VPMは科学的な考え方を重視するが、決して現場で培われた優れた直感を否定するものではない。

 今回は、こうした考え方に基づき、現場での改善活動に入る前に実施するシミュレーション(思考実験)を紹介したい。シミュレーションでは、具体的な改善活動の対象と内容を明確にする。従って、生産性向上という成果を得るためには、欠くことのできない基本プロセスである。

〔以下、日経ものづくり2012年11月号に掲載〕

長沢 亮(ながさわ・りょう)
テクノ経営総合研究所
1979年に新潟大学理学部物理学科を卒業。家電・パソコンメーカー、化学メーカーで生産技術の開発や機械設備の設計、工場エンジニアリングの設計などを担当。2005年にテクノ経営総合研究所に入社し、VPMに基づいて、製造や生産管理、設計開発、営業、物流部門を対象にコンサルティング業務を手掛ける。2011年4月に同社ものづくりセンター長に、2012年4月に常務執行役員に就任して現在に至る。