達人の頭の中にある「知恵」を引き出すには、対話の前提となる用意が必要であることを前回述べた。すなわち、達人の持つ能力は直感的なものであるため、それを多くの人の知恵に転換するには適切な場と目的の設定、準備物が必要である。これを踏まえた上で、達人との対話を始める。
ただ、いきなり知恵の具体的中身についての質問をすればよいというものではない。聞き手としての「対話の原則」があって、それに従うことでより的確な情報を引き出せるようになる、と考えている。これは達人に話を聞く場面に限らず、対話一般にいえることであろう。
知恵に関する質問の前に、全体の業務の流れを捉え、その中のどこで達人の知恵が発揮されているのかを把握しておく必要がある。従って、業務を「可視化」するテクニックが役に立つ。このテクニックとして、業務を工程(プロセス)、製品(プロダクト)、人員や設備(リソース)の3要素の複合体として捉える「PPRフレームワーク」と、インプットとアウトプットの関係に注目した「IPO構造」のプロセス表現についても説明する。
〔以下、日経ものづくり2012年11月号に掲載〕
インクス 事業企画室 ウィズダム・エンジニアリング・リーダー