発光パネルの製品化は進んでも市場が拡大せず、長い助走路に立ち止まっていた有機EL照明。それが、いよいよ離陸のゴーサインが出たようだ。青信号が点いたのは、大手メーカーの参入と発光効率についての技術革新が相次いだため。多くのメーカーは、高効率な蛍光灯を超える100lm/Wは2年以内、照明器具全体でLED照明に並ぶ130lm/Wも3年以内に達成するメドを立てている。

有機EL照明の導入始まる

 白色に発光する有機EL照明の「離陸」、つまり本格的な普及の開始が近づいてきた。

 有機EL照明の発光パネルが最初に発売されてから、既に3年ほどがたっている。だがこれまでは、たとえ量産ラインを導入したメーカーでもパネルや照明器具の市場が拡大せず、開店休業状態が続いていた。理由はたくさんあるが、最大の理由は高価だったこと。価格は10cm角のパネルが1万~数万円だった。もちろん価格は、量産すれば下がる。しかし各メーカーは、いわゆる「鶏と卵」問題から抜け出せずにいた。市場が小さいため量産に向けたリスクが取れず、その結果、価格が高止まりして市場が拡大しない、というジレンマである。

 最近になってそのジレンマを打ち破る変化がいくつか見えてきた。例えば、スマートフォン向けの小型有機ELディスプレイの市場が拡大し、55型という大型テレビ向けディスプレイの発売も迫ってきたことだ。有機EL照明向けでも、材料や製造装置の低コスト化という恩恵が期待できる。

 加えて、技術開発が順調に進み、有機EL照明の発光効率が飛躍的に向上し始めた。それを背景に、大手企業がリスクをとって量産に向けた投資を始めたことも停滞状況を変えつつある。実際に有機EL照明を導入する利用者も増えてきた。

 これらの動きにより、調査会社は有機EL照明の市場を2018年に世界全体で約40億~60億米ドルと見積もっている。これは現時点での有機ELディスプレイの市場規模と同程度であるが、その後も右肩上がりに市場が拡大しそうだ。調査会社の米IHS Electronics & Media(旧韓国Displaybank)社によれば、「まずは高級住宅から普及が進み、次に病院、そして店舗、オフィスへと導入が続く」(同社 日本代表のHarry Kim氏)という。

『日経エレクトロニクス』2012年10月29日号より一部掲載

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