自動車に向けたマイコン、いわゆる車載マイコンの市場が急拡大している。自動車の高性能化や低燃費化、快適性向上、安全性向上などを実現する上で、欠かせない存在になっているからだ。今回は車載マイコンの最新事情を解説する。

 その昔、自動車はすべてメカニカル制御だった。変化が訪れたのは1970年代である。半導体技術の進化とともにマイコンが登場し、エレクトロニクス制御がさまざまな機器に搭載され始めた。もちろん、自動車とて例外ではない。1970年代後半には、エンジン制御にマイコン(ECU:Electronic Control Unit)が採用され始めた。
 その後、自動車のマイコン搭載個数は増加の一途をたどる。1980年には1台当たり約8個、1990年には15~20個、2000年には30~35個、2005年には50~60個へと達した。そして現在、多い車種では約80個ものマイコンが搭載されている。
 この流れは、とどまるところを知らない。米国の調査会社であるStrategy Analytics社の調べによると、今後も車載マイコン市場は順調に伸びていく。2011年における車載マイコンの市場規模は50億米ドル強だったが、5年後の2016年には80億米ドルを突破する見込みだ。2011年~2016年の年平均成長率は9.8%にも達する。

マイコンを使えば燃費が向上する

 80個ものマイコン。これらは自動車のどの部分に使われているのだろうか。
 用途は、大きく四つに分けられる(図)。一つは、パワートレーンだ。具体的には、エンジン制御や燃料マネジメント、燃料噴射制御などの用途である。これらの用途にマイコンを適用すれば、燃費を向上できる。さまざまなセンサで検出した情報を基に、ガソリンの供給量を必要最小限に抑えるといった制御が可能になるからだ。

以下、『日経Automotive Technology』2012年11月号に掲載
図 車載マイコンの4大用途
図 車載マイコンの4大用途
車載マイコンが実際に適用される用途は大きく分けて四つある。パワートレインとボディ、シャシー/セーフティ、ドライバー情報システム(DIS)である。(写真提供:日産自動車)