トヨタ自動車は2012年8月、5ドアハッチバック「オーリス」を全面改良して国内で発売した。車体のねじり剛性を高めたうえで全高を低くし、走行性能を高めた。販売価格は171万円から225万円。国内の販売目標台数は月2000台である。

 トヨタは2006年に初代オーリスを発売、今回の全面改良で2代目になる。先代の世界販売台数は累計で113万台。そのうち欧州での販売が7割弱を占め、日本が1割弱である。今回のモデルも先代と同様に「欧州を強く意識」し、競合車種としてドイツVolkswagen社の「Golf」などを想定。これらに対抗するため「スポーツハッチバックという方向性」を打ち出し、走行性能を高めることを重視した。
 このため、車体のねじり剛性を従来型と比べて約10%高めた。旋回時に車体がねじれにくくなり車両の姿勢が安定する。ねじり剛性の向上に特に寄与したのが、後ろのハッチバック開口部周囲の部材のつなぎ方や、板厚などを変えたことである(図)。ハッチバックの場合はセダンと異なり室内と荷室を隔てる部材がない。その部材を補強材として使えないので、後ろの剛性が低くなりがちである。
 従来型では開口部周辺をロの字形の構造にするため、地面から見て縦の鋼板と横の鋼板をつなげるのに中間部材を介して溶接していた。旋回時に横加速度が加わると剛性の低い中間部材に応力がかかり変形してしまう。そこで新型では、中間部材をなくして縦板と横板を直接溶接する構造にした。さらに縦板の厚みを0.8mmから1.0mmに、横板の下側の厚みを0.7mmから0.8mmに増やして剛性を高めた。

以下、『日経Automotive Technology』2012年11月号に掲載
図 ハッチバック開口部の剛性を高めた
図 ハッチバック開口部の剛性を高めた
板厚を増やし、縦と横の鋼板を中間部材なしにつないだ。