国土交通省が旗を振る「超小型モビリティ」が進まない。それでもメーカーは動き出している。現在ある法規の枠を使い、新製品を市場に出してきた。トヨタ車体の「コムス」を筆頭に、光岡自動車の「雷駆-T3」、タケオカ自動車工芸の「T-10」、淀川製作所の「Meguru」などが続く。姿のあるミニカーから、まだ姿を現さない「超小型モビリティ」が見えてくる。

 この6月、国土交通省が「超小型車モビリティ導入に向けたガイドライン」を発表した。また、観光や訪問医療に同省が認めた「超小型モビリティ」を使う自治体や企業に対して半額を補助する制度が、2013年度から始まる。軽自動車よりも小さいクルマの普及を目指す動きが目立ってきた。
 ただし、“なだれを打って”という勢いにはなっていない。国土交通省が新しい車両区分を打ち出せないでいるためだ。
 参入を目指すメーカーは「軽よりも小さい代わりに税金も安い」車両区分が出てくることを期待する。どんな寸法、どんな衝突基準、どんな税制になるのかを見て、参入するかどうか判断し、設計に着手したい。
 ところが、今のところ国土交通省が具体的に動いているのは、今まで公道を走れなかった車種を「軽自動車として認める」という形の規制緩和にとどまる。これは今年度中を目指している。
 新しい車両区分ができるかどうかは明言しないのだが、できるとしても2015年以降になりそうだ。軽自動車業界との利害調整、税制、海外の圧力など難しい交渉をする必要があるので、同情の余地はあるのだが、時間はかかりそうだ。
 国土交通省の動きを待たず、民間では“ミニEV(電気自動車)”を商品化する動きが目立ってきた。この7月、トヨタ車体は新型「コムス」を発売した。10月には光岡自動車が「雷駆-T3」を発売する。タケオカ自動車工芸は「T-10」、淀川製作所は「Meguru」をそれぞれ販売している。

以下、『日経Automotive Technology』2012年11月号に掲載