日経テクノロジーオンライン
雑誌 2012年11月号 Cover Story

コストを上げずに軽くする

ホットプレス、汎用樹脂の活用が進化

2012/09/28 16:53
 

 クルマの燃費向上が世界の自動車メーカーにとって最大の課題となる中、そのための有力な手段である軽量化で、材料・工法の占める比率が増している。これまで車体の軽量化では、構造の見直しや、高張力鋼板への置き換えが主な手段だったが、2020年に向かって強化される燃費基準を考えると、それだけでは足りない。強度は高いもののコスト高がネックとなって敬遠されてきたホットプレス材が、工法の低コスト化で国内でも採用拡大の兆しが見えてきたほか、樹脂部品でも構造の工夫や素材の配合の見直しで、コストを上げずに軽くする動きが活発化してきた。(鶴原吉郎)

Part1:燃費規制が迫る軽量化

高張力鋼板頼みに限界
安いクルマも新材料・新工法採用

車体を軽量化する上で、材料技術の比重が増している。これまで材料転換では、高張力鋼板の使用比率を上げることが主な対策だったが、この手法では限界が見えてきた。欧州で普及しているホットプレス技術が国内でも広がる兆しが見えてきたほか、樹脂の活用や、樹脂そのものの軽量化を進める動きが加速している。

 材料技術の活用で車体を軽量化した新型車が相次いで登場している。目立つのは、A(l アルミニウム)合金やCFRP(炭素繊維強化樹脂)といった高性能・高コストの材料ではなく、鋼や汎用的な樹脂を改良することで大幅な軽量化に結び付けている点だ。
 例えば、ホンダが2011年11月に発売したホンダの軽自動車「N BOX」。車体に国内向けのホンダ車としては初めてホットプレス材(後述)を使ったことなどでホワイトボディの質量を10%軽くした〔図1(a)〕。トヨタ自動車は2012年5月発売の新型「カローラフィールダー」のバックドアを同社としては初めて樹脂化することで質量を2.5kg減らしている〔図1(b)〕。
 マツダが2012年2月に発売した新型SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)「CX- 5 」は、前後のバンパービームに強度が1800MPa級のホットプレス材を世界で初めて実用化、4.5kgの軽量化につなげたほか、バンパーにも薄肉に成形できる新開発のPP(ポリプロピレン)を採用した〔図1(c)〕。

以下、『日経Automotive Technology』2012年11月号に掲載
図1 材料技術を活用して軽量化した新型車
図1 材料技術を活用して軽量化した新型車
(a)ホンダが2011年11月に発売した「N BOX」。センターピラーにホットプレス材を採用して軽量化した。(b)トヨタ自動車が2012年5月に発売した新型「カローラフィールダー」。バックドアを同社として初めて樹脂化した。(c)マツダが2012年2月に発売した「CX-5」。ホットプレス材と薄肉に成形できる新樹脂でバンパーシステムを軽くした。

Part2:鋼を強くする

採用活発化するホットプレス材
先行する欧州、追う日本

1500MPa以上の引っ張り強さとなるホットプレス材の実用化では欧州が先行する。2012年9月に公開されたドイツVolkswagen社の新型「Golf」は車体骨格の28%にホットプレス材を使った。高コストがネックになって採用が遅れていた日本でも冷間プレス並みの成形コストや、世界最高強度を実現する技術が相次いで実用化し、普及拡大の兆しが出てきた。

 2012年9月にドイツVolkswagen社(VW)は7世代目となる新型「Golf」の詳細を公開した。その大きな特徴は燃費を最大23%向上させていることで、エンジンの改良と並んでそのための原動力となっているのが、最大100kgにも及ぶ車体の軽量化だ。特にホワイトボディは、車体骨格へのホットプレス材の使用比率を従来型Golfの6%から28%へ大幅に拡大したことなどにより、23kgの軽量化を達成した。
 ホットプレス材を多用しているのはフロア周りで、エンジンルーム隔壁の下側部分からセンタートンネル、後席足元周りのクロスメンバにかけてホットプレス材を採用している。いわば車両の「背骨」に当たる部分を、すべてホットプレス材としているのだ(図2)。こうした軽量化努力によって、アンダーボディを従来よりも18kg軽くした。また、アッパーボディでもAピラーからルーフサイドレールにかけてホットプレス材を適用した。

以下、『日経Automotive Technology』2012年11月号に掲載
図2 新型Golfの車体骨格
図2 新型Golfの車体骨格
紫色の部分がホットプレス材。ホットプレス材の使用比率は、従来型Golfの6%から、新型Golfでは28%に高めたとしている。

Part3:樹脂を賢く使う

薄肉化やフィラレス化が進展
鋼、ガラス代替も着実に進む

鋼から樹脂への代替は軽量化の有力な手段と見なされてきたが、コストが上昇することがネックとなり、大幅な採用拡大は進んでいない。こうした中、トヨタ自動車が汎用的な材料の使い方を工夫してバックドアを初めて樹脂化したほか、マツダやスズキは樹脂の大型部品であるバンパーの材料を軽量化するなど、使いこなしの高度化が進んでいる。

 トヨタ自動車は2012年5月に全面改良した「カローラフィールダー」に、同社としては初めてとなる樹脂製バックドアを採用した。従来の鋼製バックドアの質量が23.9kgだったのに対し、樹脂製バックドアは21.4kgと、2.5kgの軽量化につながった。具体的な数値は明らかにしないが、コストも下がっているという。開発は、国内向け新型カローラの開発を担当した関東自動車工業(当時、現在はトヨタ自動車東日本)が実施した。
 通常、鋼製部品から樹脂部品に置き換えると、コストは上昇するのが普通。これに対し、今回コストが下げられたのは樹脂化により部品を統合し、部品点数を従来の16点から12点へと4点減らしたからだ(図3)。

以下、『日経Automotive Technology』2012年11月号に掲載
図3 新型バックドアの構成を従来と比較したところ
新型バックドア(下)は従来のバックドア(上)に対して、部品点数を16点から12点に減らし、2.5kg軽量化した。
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