独立した機構でインタロックを確保
前回は、国際的な動向として機械のメーカーに対して安全性の立証が求められてきていることを紹介した。続いて今回および次回は、実際の事故事例2件について国際的な安全確保の観点から分析する。まず今回は、作業者が製麺機のカッタで手の指を切断した事故を取り上げる。
事故の概要
事故は、1988年7月5日に東京・中野の製麺工場で発生した。製麺機による製麺工程が終わり、作業者は麺を練るローラの清掃を開始した(図)。ローラを動かしたり止めたりするスイッチを右手で小刻みに操作しながら、ローラ付近にたまった麺を左手で取り除いていく。その作業中に麺を長さ方向に切るカッタが突然動き出し、作業者の左手の中指と薬指を切断してしまった。
なぜ、カッタは作業者の意図に反して動いたのか。それを考察するに当たり、まず製麺機の駆動機構を見ておこう。カッタの駆動源であるモータの制御は、操作盤の電源入ボタンおよび電源切ボタンで行う。電源入ボタンを押すとモータが回転し、カッタと連結した摩擦クラッチに動力が伝わる。電源切ボタンを押すとモータが止まる。これとは別に摩擦クラッチの動作を制御するストッパがあり、摩擦クラッチの拘束/解放を電気的に制御できるようになっている。
〔以下、日経ものづくり2012年10月号に掲載〕