タブレット端末や音声システムを活用し、工場の現場作業を支援する取り組みが広がってきた。作業手順やチェックリストを紙に印刷していたこれまでのやり方を、単純にITシステムに置き換えたものではない。ITシステム導入と同時に、図面や作業手順書を参照したりチェックリストに記入したりする作業者の手間を大幅に低減しているのだ。

紙の参照や記入は大きな手間

 現場の作業者がものづくりに関する情報を参照したり、記入したりする媒体としては紙の書類が長い間使われてきた。

 しかし、最近の製品は、構造や部品構成が複雑になった上に、少量多品種の製品を短いリードタイムで生産しなければならない。これまでの紙の書類を使った管理法では、情報を最新の状態に維持したり、現場で必要な情報を素早く見つけ出したりすることが難しく、限界を迎えつつあると指摘されていた(図)。そこで、現場で扱う情報を電子データ化することで、こうした問題を根本的に解決しようという取り組みが始まったのだ。作業手順書などを電子データ化してパソコンのディスプレイに表示したり、手書きのチェックシートの代わりにパソコンでチェックしたりする方法だ。

〔以下、日経ものづくり2012年10月号に掲載〕

図●現場作業支援の変遷
図●現場作業支援の変遷
紙に印刷された作業手順書やチェックシートを使っている場合は、変更内容を伝えるのにタイムラグが発生したり、必要な情報を探し出すのに時間がかかったりする。電子データ化することでこれらは解決できるが、現場作業をより効率化するためには、持ち運びが容易で現物のすぐそばで活用できるタブレット端末や、作業者の視線や手の動きを妨げない音声システムが有効となる。